安倍晋三首相は今年1月、地球温暖化対策に関して、11月にポーランドで開催される国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)までに「25%削減目標をゼロベースで見直すとともに、技術で世界に貢献していく、攻めの地球温暖化外交戦略を組み立てる」よう指示した。
そこで、経団連の環境安全委員会地球環境部会(進藤孝生部会長)は5日、東京・大手町の経団連会館で会合を開き、地球温暖化対策をめぐる国内外の動向や日本政府の対応等について、経済産業省の三田紀之大臣官房審議官から説明を聞き、意見交換を行った。三田審議官の説明概要は次のとおり。
■ 将来枠組みをめぐる国連気候変動交渉の動向
温室効果ガス削減に関する2020年以降の国際枠組みについては、15年12月にパリで開催されるCOP21までに妥結すべく、国連交渉が進められている。今後、潘基文国連事務総長主催の首脳級会議(14年9月予定)に向けて、交渉が本格化していくと考えられる。
米国は、主要途上国を含むすべての国の参加を前提に、各国がそれぞれの実情に応じた貢献目標を提出・誓約し、6カ月程度かけて各国が検証する、いわゆる「プレッジ・アンド・レビュー」方式を提案し、15年前半に将来枠組みの目標案を提示すべき旨を主張している。
EUは米国提案に基本的に同意しつつ、各国が20年以降の目標案を14年中に提出するよう呼びかけている。
これに対し、途上国の一部は先進国が率先して高い目標を掲げるよう強硬に主張しており今後、目標案の提出時期を含め、具体的に議論を詰めていく必要がある。
■ わが国のスタンス
わが国としては、すべての国の参加に向けて受け入れ可能で魅力的な法的枠組みにすべきとの立場であり、米国等先進国と大きな相違はない。ただし、排出削減に関しては、国際競争の公平性が確保されるかたちで主要経済国が削減目標を提出することが重要であることや、各国の削減に向けた取り組みは排出実績だけではなくさまざまな政策措置(例=再生可能エネルギー導入等)の結果によっても評価されるべきことなどを主張している。
■ わが国の攻めの戦略
東日本大震災以降、原子力発電所稼働停止に伴う火力発電の焚き増しにより、わが国の温室効果ガス排出量は増加している。また、13年度の燃料費の増加は、約3.6兆円にも上ると試算されている。
こうしたなか、わが国としては、高効率石炭火力や次世代自動車など優れた環境エネルギー技術を開発、世界に普及することによって、50年までに世界全体で温室効果ガスを半減する目標に貢献していく。
また、エネルギー・環境分野のイノベーション加速を通じた地球温暖化問題を解決する観点から、世界トップレベルの科学者等が一堂に会し議論する「エネルギー・環境技術版ダボス会議」を来年から毎年、日本で開催する予定である。
【環境本部】