1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2013年11月21日 No.3155
  5. 「わが国の国際協力のあり方」

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年11月21日 No.3155 「わが国の国際協力のあり方」 -JICAの田中理事長が常任幹事会で講演

講演する田中JICA理事長

経団連は6日、東京・大手町の経団連会館で常任幹事会を開催し、国際協力機構(JICA)の田中明彦理事長から、「わが国の国際協力のあり方」と題する講演を聞いた。講演の概要は次のとおり。

■ 地殻変動する世界と日本

世界経済の中心は、北大西洋諸国から太平洋・インド洋周辺諸国に移っているが、太平洋・インド洋周辺諸国には、高成長国もあれば、政情が不安定で成長軌道に乗れないでいる国、つまり「脆弱国」も存在する。脆弱国にテロリスト集団がさまざまなかたちで関与し、高成長国の成長の脅威となるケースもある。そこでJICAでは、(1)高成長国が持続的に発展し、中長期的な観点から、わが国企業、さらには世界全体の市場拡大にもつながること(2)脆弱国の課題を解決すること――が重要と考え、国際協力に取り組んでいる。

■ 国際協力の課題

高成長国では、目覚ましい発展を遂げていても、「中進国の罠」といわれる状態に陥り、生産性向上・社会開発の減速により成長が停滞するおそれがある。成長国で特に懸念されるのは、格差の拡大である。成長国は、新しい産業を担う人材を育成するとともに、格差を是正する社会システムやセーフティーネットを構築することが重要である。また、順調に経済成長していても、南アフリカ共和国等でみられる平均寿命の低下は、社会に歪みを生じさせることから、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けた取り組みが必要である。

脆弱国の課題解決は難しい問題だが、世界の全人口が増加しているなかで、絶対貧困層の人口は減少しており、また内戦の数も減っている。有効な措置をとれば、脆弱性を改善させることは可能である。JICAは、脆弱国のインフラ整備支援等を通じて、脆弱国の安定化に取り組んでいる。

■ 日本の成長戦略と政府開発援助(ODA)

国際協力を行ううえで、「課題先進国」といえる日本の強みも生かす必要がある。例えば日本は、自然災害、高齢化、社会保障などの課題に直面し、長年その解決に取り組んでいるので、同様の課題を抱える諸外国に対して、日本のノウハウや技術を活用した国際協力を行えば、国際社会におけるわが国の信頼感・存在感の向上に貢献できる。日本政府は、「経協インフラ戦略会議」を今年春に立ち上げてさまざまな議論を進めているが、JICAとしては今後、PPP(官民パートナーシップ)インフラ、海外投融資、中小企業海外展開支援、BOPビジネス連携調査、民間連携ボランティアなど、民間連携事業をさらに拡大していきたい。

なお、日本のODA予算は1997年をピークに減少し、今ではピーク時の半分の額となっている。安倍政権のもとで、日本を存在感のある国とするために、ODAについて経済界の皆さま方にもご理解いただけるとありがたい。

【総務本部】

「2013年11月21日 No.3155」一覧はこちら