経団連は17日、東京・大手町の経団連会館で開催した社会貢献担当者懇談会(小川理子座長、金田晃一座長)に、アレクサンダー・アレイニコフ国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)副高等弁務官を招き、UNHCRが行う人道支援活動への企業の関与のあり方について事例を交えた説明を受けるとともに、意見交換を行った。
同氏の説明の概要は次のとおり。
なぜ、さまざまな社会課題があるなかで難民支援に取り組むべきなのか。それは国から逃れた難民には、自国の行政からの支援が期待できないからである。UNHCRは行政に代わってそのような人々を救う組織である。しかし、支援ニーズを予算として積み上げると53億ドルに上るのに対し、われわれが実際に集められる資金は半分の27億ドルにすぎない。より一層の支援を期待したい。
企業の支援で寄付と並んでありがたいのは、革新的な製品の提供やプログラム展開のノウハウである。
私はUNHCRでイノベーション担当部署も率いており、企業とのパートナーシップの深化を通じて支援活動のイノベーションを進めたいと考える。例えば、われわれはヒューレット・パッカードやマイクロソフトと協力して、難民がコンピューター技術を学び自活につながるような支援プログラムを展開している。また、UPSのバーコードによる物資管理システムの開発支援によって、支援物資の管理方法が改善された。
日本の企業との間でも、衣類提供を行うユニクロ、ソーラーランタンを提供したパナソニック、チョコレートの売り上げの一部を寄付する明治、女性難民の健康を改善する資生堂、社員カメラマンを派遣するキヤノンのように、多くの協働による支援事例がある。特に富士メガネとは関係が深く、難民に長年メガネを送ってきた功績から、同社の金井会長はナンセン難民賞を受賞している。
今後、企業等の民間セクターが難民支援分野で重要な役割を果たすことを期待している。国連機関は官僚主義的で複雑であり、行動するまでに時間がかかり過ぎると批判されてきた。しかし、企業と協力し、新しい活動方法を学ぶことで、変わろうとしている。企業にも、利益の追求のみならず、社会のなかの一市民として社会的責任を果たすことを望んでいる。
われわれは難民の現状と彼らの声を届け、何が効果的支援につながるかを伝えることができる。企業には、自らができる効果的な支援の方策を教えてほしい。われわれと企業がお互いを学びながら結びつきを強めていけば、イノベーションにつながるのではないか。
【政治社会本部】