経団連は17日、東京・大手町の経団連会館で、米倉弘昌会長、渡文明審議員会議長、副会長ら幹部の出席のもと、駐欧州大使との懇談会を開催した。米倉会長からは、日EU経済連携協定(EPA)の早期締結に向けた一層の尽力を求めた。大使側の発言概要は次のとおり。
■ 塩尻孝二郎 EU代表部大使
欧州債務危機は発生から4年が経過し、落ち着きをみせつつあるが、まだ油断はできない。特に失業問題は依然として深刻な状況にある。こうしたなか、EUの政治リーダーは、財政同盟や銀行同盟の議論を進めるなど、「欧州は、危機に対する解決策を積み重ねて構築される」との欧州統合の父の一人といわれるジャン・モネの言を引いて、EU統合に対する強い決意を示している。
日EU EPA交渉は10月の第3回交渉会合が重要である。11月に開催される日EU定期首脳協議で弾みをつけ、早期締結を目指す。環太平洋経済連携(TPP)・東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉がもたらす相乗効果、成長戦略のもとでのわが国への直接投資の活性化などは、早期締結の促進要因となる。交渉開始に重要な役割を果たした日EU産業間の連携は交渉促進にも不可欠である。引き続きオールジャパンで取り組みたい。
■ 林景一 駐英国大使
2010年の総選挙後、保守党・自民党連立政権は緊縮政策を進める一方、成長に向け法人税減税等を行ってきた。今年に入って景気は上向いており、こうした状況を背景に、保守党の支持率低下にも歯止めがかかっている。キャメロン首相は、今年1月、17年末までにEU残留に関する国民投票を実施する旨を表明した。6月には保守党議員より国民投票法案が議会に提出され、現在審議中である。同党が15年5月の総選挙に勝利すれば、17年中に国民投票が実施される可能性が高い。キャメロン首相はEUの規制を改善し、競争力を強化することによってEU残留の道を探る意向である。
■ 中根猛 駐ドイツ大使
9月の連邦議会選挙では、メルケル首相率いるキリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)が大きく党勢を拡大した。同党と社会民主党(SPD)との大連立が成立する可能性が高まっているが、政権発足にはしばらく時間を要する。対欧州政策に関して両党は、財政規律、構造改革重視との基本的立場で一致しており、大幅変更の可能性は低い。経済は2000年代初頭までの長期低迷から再生し、欧州のなかで際立って健全な状態にある。
■ 河野雅治 駐イタリア大使
8月にベルルスコーニ元首相の有罪が確定し、イタリア内政は一大転換点にある。このようななかレッタ政権は、経済政策に本腰を入れつつある。ただし、債務残高のGDP比率が減少しないなかで歳出拡大余地は乏しい。規制改革、行政スリム化などの構造改革や、ねじれ解消のための選挙制度改革に取り組もうとしている。さらには、「Destination Italia」を掲げ、15年のミラノ万博も活用しつつ、イタリアへの投資誘致に力を入れている。
■ 佐藤悟 駐スペイン大使
ラホイ政権は、議会での絶対過半数を背景に経済回復に向けて構造改革を断行している。財政赤字削減、金融セクター健全化、労働市場改革などの結果、最近は輸出が増大し、観光も好調で成長の兆しがみられる。他方、若年層を中心に失業は引き続き深刻な水準にある。日本との交流400周年を機に、10月初めにラホイ首相が来日した際には、首脳会談において、二国間関係の飛躍的な強化に合意したほか、アジアと中南米における両国企業の連携促進を通じた新興国の活力の取り込み、日EU EPA交渉の早期妥結への協力などの方針を確認した。
【国際経済本部】