経団連は6日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会(篠田和久委員長)を開催した。当日は労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員から、今後の労働法制のあり方を聞いた。説明の概要は次のとおり。
■ 日本型雇用システムとその変容
いわゆるメンバーシップ型の正社員が縮小し、非正規労働者が増大するなか、それぞれに矛盾が生じている。その意味で、労働法制のあり方について議論する際には、「規制改革」から一段踏み込んで、日本型雇用システムをどのように改革するかという視点が必要である。
■ 限定正社員(ジョブ型正社員)
限定正社員(職務、労働時間、就業場所を定めた期間の定めのない雇用契約の労働者)について、解雇規制のあり方と関連づけて議論されているが、その普及は解雇規制を緩和するというような話ではない。限定正社員は、必ずしも高度とは限らない専門能力活用型の無期雇用と位置づけるべきである。
どんな仕事も遂行できる「iPS細胞」ではない労働者として、組織のなかでいかに機能させるか、企業側の努力が問われている。
■ 解雇規制と金銭解決
現行の法は解雇の金銭解決を否定していない。実際、労働審判やあっせん手続きなどにおいて金銭解決の事例は多数存在する。裁判後の金銭解決の金額について一定の基準を決めておけば、裁判以外の場でも解雇を金銭で解決する際の目安となるなど、労働者側にもメリットが大きいのではないか。
■ 労働時間規制の誤解
労働時間規制の緩和が主張されているが、わが国の労働時間規制は極めてゆるいといえる。むしろ、異常に厳しいのは残業代規制である。
そもそも、労働基準法の割増賃金の規定は、労働時間の話ではない。中高位の労働者の報酬については、労働時間と切り離す一方、休息時間の設定など、健康確保のためのセーフティーネットを導入するなどの制度設計をすべきである。
■ 労働条件変更と集団的労使関係システム
労働者が多様化するなか、現行の集団的労使関係法制には限界がある。労働条件の変更を正当化し得る新しい従業員代表法制をつくる必要がある。また、過半数組合を労働組合法に正しく位置づけていく必要もある。
■ 労働者派遣法制の見直し
労働者派遣法制については、今年8月に厚生労働省の有識者研究会が報告書を策定し、法改正に向け、審議会の議論が開始されている。そのなかで最も重要な点は、派遣先の常用労働者が派遣労働者によって代替されることを防止する「常用代替防止」の考え方を根本的に改め、派遣労働者の雇用安定に着目したことである。
また、今回の派遣法見直しの機会をとらえ、一定のスキルを前提に、業界レベルの協約に基づく賃金を設定することで、ジョブ型の労働市場の形成を先導していくことを期待したい。
【労働政策本部】