経団連は5日、東京・大手町の経団連会館で中堅・中小企業委員会(高原豪久委員長)を開催した。当日は中小企業庁の北川慎介長官から、これからの中小企業・小規模事業者施策について講演を聞くとともに、今年度の中堅・中小企業委員会の活動内容に関する意見交換を行った。北川長官の講演の概要は次のとおり。
■ 中小企業をめぐる厳しい現状
現在、わが国の開業率は、米国や英国の半分程度の約4.5%と低迷している。黒字の中小企業・小規模事業者も全体の27%に減少している。こうしたなか近年、輸出や海外投資を進めて海外に活路を求める中小企業が増加している。また現在、議論されている消費税率の引き上げをめぐって、価格転嫁できないのではと懸念する声も多い。
このような状況を踏まえ、地域の雇用・活力を支える小規模事業者に光を当てた施策の再構築を図ると同時に、海外展開など中小企業・小規模事業者の新たなチャレンジを応援していく。
■ 中小企業の成長に向けた政府の取り組み
中小企業庁は、今年2月、「“ちいさな企業”成長本部」を設置し、各地の中小企業・小規模事業者の意見を聞き、その結果を「行動計画」として取りまとめた。「行動計画」では、(1)地域に眠るリソースの活用・結集・ブランド化(2)中小企業の新陳代謝の活発化(3)成長分野への参入(4)海外展開――を掲げている。政府の「日本再興戦略」にも、この4点が織り込まれている。
■ 今後の具体的な施策内容
経営支援に関しては、各地の商工会、商工会議所、中小企業団体中央会といった中小企業関係団体による支援に加え、専門家、地域金融機関、自治体などをネットワーク化して支援体制を充実させていく。海外展開については、JETRO(日本貿易振興機構)、中小企業基盤整備機構、商工会議所等の間で、ワンストップサービスを図っていく。事業承継・事業引き継ぎについても、相続税の減免など、さらなる対策を講じていく。
金融・資金繰りに関しては、この20年間に中小企業向け融資が減少していることから、公的金融や信用保証の充実に加え、新たな中小企業会計の普及を通じて、資金繰りに貢献していく。
税制については、「中小企業設備投資促進税制」の拡充に向けた議論を関係方面と進めている。また今後、消費税率が引き上げられた際に、取引先に製品への価格転嫁を拒否されるなど、中小企業の取引条件が不利にならないよう、監視体制の強化などを図りたい。
【産業政策本部、労働政策本部】