経団連は8月6日、東京・大手町の経団連会館で環境安全委員会廃棄物・リサイクル部会(山田政雄部会長)を開催した。当日は、慶應義塾大学経済学部の細田衛士教授から、循環型社会形成に向けた政策のあり方等について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 静脈経済の問題
静脈経済とは、動脈経済(生産・流通・消費等)から排出される残余物の回収、リサイクル、最終処分などに関わる経済のことを指す。
静脈経済には、(1)残余物の処理を委託された業者が、委託された物の中身について情報を与えられない(2)処理を委託した主体に、処理・リサイクルの情報が供与されない――といった情報の非対称性の問題が存在する。
これでは、適正な処理を安く行う名目で不適正処理・不法投棄を行う業者が増え、優良処理事業者が市場から駆逐されかねない。残余物の発生・排出抑制も進まない。
■ 廃棄物処理法の問題
廃棄物処理法にも問題がある。廃棄物処理法では、「廃棄物」を扱う際、さまざまな許可を取得しなければならない。「廃棄物」に該当するか否かは、旧厚生省通達(1971年10月25日)において、「占有者の意思、その性状等を総合的に勘案すべきもの」とされている。
しかし、料金を払って残余物を引き取ってもらっていれば、行政は、それだけを理由に「廃棄物」と安易に判断してしまう傾向にある。「廃棄物」と判断されれば、前述のとおり、さまざまな許可を取得しなければならず、自由な資源循環が阻害される。
■ 循環型社会形成に向けて
産業界の自主的な取り組みもあり、廃棄物の最終処分量は90年から大幅に減少した。しかし、最終処分場は新規建設が難しく、やがて枯渇すると考えられる。そのため、残余物の発生・排出抑制を一層進めるとともに、効率的な資源循環を行わなければならない。
そこで、拡大生産者責任(注1)を基礎として資源循環を促進する必要がある。その一環として、生産者には環境配慮設計(注2)の推進等が求められる。
また、静脈資源(使用済み製品・部品・素材など)の資源性に注目し、資源利用の観点からの政策に重点を置く必要がある。静脈資源が海外に流出してしまうのはもったいないことに加え、場合によっては、海外で汚染が発生してしまう。まずは、静脈資源の国内循環を進め、そのうえで、汚染が発生しない透明で効率的な東アジア資源循環システムをつくる必要がある。
(注1)拡大生産者責任=自ら生産する製品等について、生産者が製品の生産の段階だけでなく、廃棄物等となった後まで一定の責務を負うという考え方
(注2)環境配慮設計=リサイクル等がしやすいよう、製品等の設計段階において環境配慮を行うこと
【環境本部】