経団連は8月5日、東京・大手町の経団連会館で、平成25年版防衛白書に関する説明会を開催した。当日は、防衛生産委員会の岩崎啓一郎総合部会長代行が司会を務め、防衛省の辰己昌良・大臣官房報道官兼大臣官房審議官から説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。
■ はじめに
今年の防衛白書は、一層厳しさを増すわが国周辺の安全保障環境と、国民の生命・財産とわが国の領土・領海・領空を断固として守り抜くため、防衛省・自衛隊が行っている広範多岐にわたる取り組みについて、コラムや図表を充実させながら説明している。特に、「日米安全保障体制の強化」を昨年は第III部のなかで記述していたが、日米同盟強化の重要性を踏まえ、第II部において「わが国の防衛政策と日米安保体制」として記述した。
また、第III部第1章は昨年までは、「自衛隊の運用」というタイトルであったが、安倍内閣における取り組みを踏まえ「国民の生命・財産と領土・領海・領空を守る態勢」というタイトルに改めるとともに、防衛生産・技術基盤の維持・強化等について新たに章を起こして記述している。
■ わが国を取り巻く安全保障環境
北朝鮮による核実験は、弾道ミサイルの能力増強と併せて考えれば、わが国の安全に対する重大な脅威であり、北東アジアおよび国際社会の平和と安定を著しく害するものとして、断じて容認できない。弾道ミサイルの射程は米国本土の中部や西部などを含む可能性があり、広く国際社会にとって現実的で差し迫った問題となっている。
中国は、既存の国際法秩序とは相いれない独自の主張に基づき、力による現状変更の試みを含む高圧的とも指摘される対応を示している。公表国防費は過去10年間で約4倍、過去25年間で33倍以上の規模となっている。また、今年4月に発表された国防白書では国防費に関する記述が一切なくなるなど、透明性が低下する面が見られる。加えて、尖閣諸島周辺をはじめ、わが国の周辺海空域で中国の公船や航空機が多数確認されており、このような中国の活動には、わが国領海への侵入や領空の侵犯、さらには不測の事態を招きかねない危険な行動を伴うものがみられ、極めて遺憾であり、中国には国際的な規範の共有・遵守が求められる。
■ わが国の防衛政策と日米安保体制
わが国の防衛政策について、(1)政府の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」における集団的自衛権の問題を含めた憲法との関係に関する検討状況(2)防衛計画の大綱の見直しに向けて7月下旬に中間報告を取りまとめた「防衛力の在り方検討のための委員会」の検討状況(3)いわゆる「敵基地攻撃能力」や「海兵隊的機能」についての国会での議論――等を紹介している。
なお平成25年度防衛関係費は実質11年ぶりに増額したものの、14年度に比べれば、まだ3000億円程度少ない状況である。
日米安保の章では、日米安保体制の意義や日米防衛協力の強化等について、今年2月の日米首脳会談に関するコラムなどを交え紹介している。特に「MV-22オスプレイの沖縄配備」については新たに節を立てて記述を充実させるとともに、「米軍再編など在日米軍の駐留に関する施策」において、普天間飛行場代替施設にかかる取り組みや嘉手納飛行場以南の土地の返還などについて政府の積極的な取り組みを記述している。
■ わが国の防衛に関する施策
わが国周辺の安全保障環境の厳しさを踏まえ、自衛隊の活動は以前にも増して緊迫感を伴うものとなっている。特に南西地域の警戒監視については、海上保安庁との緊密な連携、中国機に対する空自戦闘機のスクランブル(緊急発進)の急激な増加など、国民に隊員の緊迫感が伝わるよう工夫した。高性能化・複雑化している防衛装備品を安定的に整備していくためには、効果的・効率的な取得に努めつつ、わが国の防衛生産・技術基盤を維持・強化していくことが重要である。今年3月、国内企業が製造を行う戦闘機F-35の部品などについては、武器輸出三原則等によらないこととした。
【産業技術本部】