経団連の経済政策委員会企画部会(村岡富美雄部会長)は8月21日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、日本政策投資銀行の田中賢治産業調査部経済調査室長と須賀一陽同部課長から、「わが国の設備投資動向について」をテーマに説明を聞いた。概要は次のとおり。
1.国内設備投資
8月5日に公表した「2012・2013・2014年度設備投資計画調査」によると、大企業の13年度国内設備投資(計画)は全産業で前年比プラス10.3%と2年連続の増加となった。なかでも非製造業は、22年ぶりの二桁増加である。
12年度の国内設備投資の実績は前年比プラス2.9%となったが、前回調査時の計画段階(同プラス12.2%)からは大幅に下方修正された。「計画に実施不確定な設備投資が含まれていた」という「統計のくせ」に加え、昨年夏頃からの景気後退により設備投資を先送りする動きが見られた。
しかし、今年度は雰囲気が変わってきた。昨年末の政権交代を経て、円高是正や株高により消費者や企業のマインドが改善し、消費・輸出が持ち直すなかで、3割程度の企業が「中長期的な期待収益率の改善」を理由に、これまで抑制していた計画を再開させ、設備投資を増やすとしている。
ただし、製造業の投資動機としては、「維持・補修」のウエートが最も高く、「能力増強」のウエートは低下した。規制緩和などの成長戦略が着実に実行され、国内にもまだビジネスチャンスがあるという認識が浸透すれば、より本格的な設備投資の増加が期待される。
業種別にみると、製造業は、鉄鋼を除くすべての業種で前年を上回り、特に石油、自動車、化学の寄与度が大きい。非製造業では、運輸、不動産、卸売・小売の寄与が大きく、消費者マインドの改善や消費形態の変化を起点に、商業施設、物流施設など関連分野への広がりが見られる。
2.海外設備投資
13年度の海外設備投資(計画)は、全産業で前年比プラス25.9%と4年連続の二桁増となった。国内での設備投資に対する海外における設備投資の比率(連結)は全産業で44.5%と、前年から6.9ポイント上昇した。引き続き海外では能力増強のための設備投資が活発に行われている。
ただし、内需の回復期待などにより、国内での生産活動の減少を伴う海外生産強化の動きは若干緩和されつつあり、とりわけ電気機械などで国内生産を再評価する動きも見られる。国内生産を継続する理由としては、「国内需要への対応」「技術・商品開発基盤の存在」を挙げる企業が多い。その一方で、08年以降の円高の時期に海外生産能力を増強した企業の9割超は、昨年末からの円安方向への動きを受けても、これまでの海外生産能力増強の方針は変更しないとしている。
3.その他
13年度の研究開発費(計画)は、全産業で前年比プラス6.0%となった。中期的には国内での研究開発を引き続き維持・強化しつつ、海外も維持・強化する方向である。
また、今回の調査では、自社の競争力の源泉として、「製品・サービスの品質」「技術力」を挙げる企業が多く、海外競合他社の競争力の源泉としては、「製造コスト」を挙げる企業が多かった。さらに、成長・競争力強化に向けての注力分野としては、「新製品・サービス開発」「販路開拓・拡大」を挙げる回答も多い。
【経済政策本部】