経団連は7月31日、東京・大手町の経団連会館で社会保障委員会年金改革部会(柿木厚司部会長)を開催し、厚生労働省年金局の黒田秀郎企業年金国民年金基金課長と山内孝一郎基金数理室長から、先の通常国会で成立した「厚生年金保険法等の一部を改正する法律」の内容および企業年金の現状と課題について聞くとともに、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 改正法成立の意義
改正法成立により、厚生年金基金を採用する企業が負っていた代行部分の運用リスクの相当部分は国(厚生年金本体)に戻ることとなり、公的年金と企業年金が明確に区分けされることとなる。企業年金が本来担う役割を充実・強化し、さらに発展していくことが今後大事である。
■ 改正法成立の経緯と背景
厚生年金基金は、現在約400万人の加入者がおり、厚生年金本体の一部を代行して運用・給付している。しかし、近年の社会経済状況のもとで、一部の基金において積立金が代行部分について保有すべき額に満たない「代行割れ」問題が常態化することとなった。そして、AIJ事件により問題が表面化し、改正法の成立に至った。
■ 改正法の概要
改正法は、代行割れ基金が早期解散できるよう5年間の時限措置として、連帯債務外しや分割納付期間の延長など特例解散制度を見直すとともに、代行割れを再び起こさないための制度的措置として、法施行後5年経過後は、積立水準が一定の基準を満たさない基金には、厚生労働大臣が社会保障審議会の意見を聴いて解散命令を発動できることとなっている。また、基金解散時の残余財産を事業所単位で既存の確定給付企業年金に移換することができる仕組みなど、移行を支援する措置が講じられている。
■ 企業年金の課題
「確定拠出年金」(以下「DC」)、「確定給付企業年金」(以下「DB」)の拡充に向け、経団連をはじめ、多くの関係者からの要望があることは認識している。DCについては、(1)拠出限度額の引き上げ(2)中途脱退要件の緩和(3)マッチング拠出の要件緩和――、DBについては、(1)給付減額手続き要件の緩和(2)承認・認可手続きの簡素化――が代表的な要望である。
また、今年度末に課税凍結期限を迎える「企業年金の積立金に対する特別法人税」については、平成26年度の税制改正に向け、税務当局と議論をすることになる。
<意見交換>
意見交換では、DCの拠出限度額を引き上げるべきとの意見が複数の委員から出された。また、「有識者会議や専門委員会でも私的年金のあり方を検討する必要性が指摘されているが、企業年金を議論する検討会を設ける予定はあるのか」との質問に対して、「現在の社会保障審議会年金部会は公的年金と私的年金の役割分担等を議論するには適している面がある。一方、今回の改正法で社会保障審議会に特例解散等に関する第三者委員会を設置することとなっている。企業年金のさらに具体的な課題を議論する場をどのようなかたちで設けるのが良いか、今後検討していくことになる」との考えが示された。
【経済政策本部】