経団連は10日、提言「今後のわが国の企業会計制度に関する基本的考え方」を取りまとめ公表した。
概要は次のとおり。
■ 提言取りまとめの経緯
わが国の国際会計基準(IFRS)への対応については、2011年の経団連の提言を契機に、金融庁企業会計審議会における議論が再開され、昨年7月に中間的論点整理が公表された。
この間、わが国ではIFRSの任意適用が増加しつつあり、また、IFRSをめぐる国際会計基準審議会(IASB)や諸外国の状況にも変化が見られることから、同提言を取りまとめた。
■ IFRSをめぐる状況
01年のIASB設立以来、多くの国々がIFRSを適用し、13年1月時点で120カ国に及んでいる(IFRS財団公表)。また、IASB議長およびIFRS財団評議員会議長をはじめ多くの委員が交代し、IASBの活動方針も変化した。
例えば、IASBは、世界の市場関係者に対し、今後の基準開発のあり方を問い、各国からのコメントを踏まえた活動を始めた。また、今年4月には、日本を含む12の国・地域の会計基準設定主体からなる「会計基準アドバイザリーフォーラム」が設立された。IASBの活動は主要国とのバイの関係からマルチの関係へと変化している。
わが国は、企業会計基準委員会(ASBJ)を中心に質の高い意見発信を続けているとともに、IASBの関連組織に多くの日本人が参画し、また運営資金の拠出を行い、IFRSの開発を支えている。このような貢献により、わが国は、IASBにおいて重要な位置を確保している。
一方、米国は、昨年IFRS適用の是非についての結論を先送りしており、会計基準の国際的な統一への道は、いまだ不透明な状況である。
■ 今後の会計制度を考えるうえでの基本的視点
まず、会計制度は、わが国の金融資本市場の競争力強化に資するものでなければならないとともに、企業経営者のニーズを満たすものでなければならない。
これら双方の視点を満たすためには、国際的に高品質な会計基準の併存を容認する必要がある。そのなかで、日本基準は、高品質を維持することが重要であり、IFRSに関しては、IASBに対し、より一層日本の意見を強く発信する必要がある。
■ 今後の対応
第1に、日本基準については、国際的な同等性を念頭に、わが国企業の経営実態や諸制度を踏まえた改善を継続する必要がある。
第2に、IASBとの関係を一層強化し、ASBJ中心のオールジャパンでの意見発信を継続する必要がある。
第3に、現在の国際情勢においては、今後とも、日本基準、IFRS、米国基準の特例からなる現行の枠組みを維持するとともに、IFRS任意適用の円滑な拡大に資する施策を講じるべきである。具体的には、(1)ASBJがIFRS適用にかかる国内指針を作成すること(2)監査法人が柔軟な対応を行うこと(3)実際の適用実務を共有化すること(4)IFRSの任意適用要件を緩和することの4点を求めたい。
第4に、IFRSの受け入れ手続きの明確化が必要であり、市場関係者の議論を経たうえで、受け入れの可否を検討するプロセスを構築すべきである。
第5に、金融商品取引法開示は連結ベースに一本化し、単体情報については、会社法の計算書類を活用する仕組みとすべきである。
【経済基盤本部】