経団連(米倉弘昌会長)は13日、「世界を舞台に活躍できる人づくりのために―グローバル人材の育成に向けたフォローアップ提言」を公表した。
近年、事業活動のグローバル化に伴い、国際ビジネスの現場で活躍できる人材へのニーズが高まる一方、大学生の海外留学者数が毎年減少するなど、若者の「内向き化」が懸念されている。こうしたなか経団連では、2011年6月にグローバル人材育成を柱とする提言を公表し、産学官が連携して取り組むべき課題を整理した。
その後、東京大学の秋入学移行への提案などをきっかけに、政府の教育再生実行会議などで具体的な施策の検討が進められていることから、今般、フォローアップの提言を取りまとめた。
提言の概要は次のとおり。
■ 英語教育の抜本的拡充
まず、初等中等教育における英語教育の抜本的拡充を求めている。大学入試でTOEFL等を活用することや、大学の専門科目を英語で履修するカリキュラムを拡大するためには、前提として、小中学校の段階から、児童・生徒の実践的英語力を大幅に強化する必要がある。具体的には、外国人教員の採用や、英語教員の採用の際、外部検定試験における成績要件を課すことなどを通じて、英語教員の英語力・指導力を抜本的に強化する。
その他、国際バカロレア(IB)課程を国内で普及させ、IB認定校を増やすことや、現行の6・3・3制を見直し、小中一貫校や中高一貫校を増やすことで、国際化教育や体験活動など、自治体や教育機関の主体性を活かした特色のある教育を実施する。
■ 「高大接続テスト」の実施と大学入試改革
高等教育では、複数回受験可能な「高大接続テスト」(仮称)(注)の実施により、高校修了時に求められる学力を担保したうえで、学生の意欲、能力、適正等を総合的に判断できる制度に大学入試を改革する。また、TOEFL等の英語の4技能を測る外部検定試験や、IBディプロマ資格の活用も検討する。
また、教養教育を拡充し、文科系は数学、自然科学の基礎を、理工系は、人文、社会科学の基礎など専門以外の多様な教養を身につけさせるとともに、リーディング大学院への取り組みなどを通じて、高度な専門性と複合領域にまたがる知識を備えた博士人材を育成する。
さらに、大学の国際化を一層加速して、ダブル・ディグリーやジョイント・ディグリー・プログラムの拡大を通じて、海外大学との教育連携を推進する。その前提として、秋入学やクォーター制の実施などにより海外の学事暦との整合性を高めることや、日本人大学教員の英語力や教育力の向上を図る。
(注)高大接続テスト=高校段階での基礎的普通教科・科目習得の達成度を測るテスト。大学入試センター試験のような、特定の集団における相対的成績を評価するものではなく、教科書に記載されているような標準的問題を出題し、高校修了時の学力目標の達成度を測る。複数回の受験を可能とする
■ 企業に求められる取り組み
一方、企業には、学生の海外留学や多様な体験活動を奨励するため、採用活動の多様化を一層進めることや、グローバル人材が活躍しやすいよう、人事・評価制度のグローバル共通化を推進する。
経団連としても、政府や大学に要請するだけでなく、大学等と連携して実施している「グローバル人材育成事業」(下表参照)を強化・拡充して実施していく。
グローバル人材育成 スカラーシップ事業 |
将来日本企業の国際的な事業活動においてグローバルに活躍する意欲を持つ大学生を対象に一人100万円の海外留学のための奨学金を支給。2013年度は36名が合格 |
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経団連グローバル キャリア・ミーティング |
海外留学帰国生を対象とした合同就職説明会・面接会 「経団連グローバルキャリア・ミーティング」を開催。2012年は8月4日に経団連会館で開催し経団連会員企業34社、留学帰国生約280名が参加。今年は7月31日に開催予定 |
グローバル人材育成 モデル・カリキュラム |
国際化拠点大学の一つである上智大学にて2012年10月から半年間、大学2年生を対象とした導入講座を試行的に実施。今後は導入講座の内容を深掘りした大学3年生を 対象とする「本講座」を実施予定 |
高校生の海外留学の 奨励(UWC日本協会) |
経団連の全面的支援を受けて運営されているUWC日本協会の活動を強化し、世界13カ国にあるUWCカレッジに高校生を派遣。IB課程の日本での普及や高校生の海外留学を奨励 |
【社会広報本部】