経団連の米倉弘昌会長、渡辺捷昭副会長(現顧問)らは5月30日、東京・大手町の経団連会館で、日本産業界の低炭素社会実現に向けた取り組みや、低炭素成長に向けた英国政府の施策などについて、英国のエドワード・デイビー・エネルギー・気候変動相と意見交換を行った。デイビー・エネルギー・気候変動相は、国連の気候変動交渉や国内エネルギー政策等を所管している。懇談の概要は次のとおり。
■ 低炭素成長に向けた日英両国の連携
冒頭、米倉会長が、日本産業界がこれまで自主行動計画を通じて省エネやCO2排出削減に具体的な成果を積み重ねてきたことを説明したうえで、2013年度以降の低炭素社会実行計画を通じて2050年の世界の温室効果ガス半減に向けて、世界最高水準の低炭素・省エネ技術の開発・普及をさらに加速していく決意を示した。
これに対し、デイビー・エネルギー・気候変動相は、日本がこれまでエネルギー効率や技術開発等の面ですばらしい成果を上げてきたことや、気候変動の分野でアジアならびに世界でリーダーシップを発揮してきたことに敬意を表しつつ、日英連携の重要性を強調した。
また、エネルギーと気候変動は極めて長期的な課題との認識を示したうえで、英国政府として、エネルギー安全保障と低炭素化に同時に取り組むべく、原子力や洋上風力等の再生可能エネルギー、CCS(二酸化炭素回収貯蔵)に取り組んでいくとの方針を示した。
さらに、低炭素成長は大きなビジネスチャンスであるとし、日本産業界とアイデアや技術等の面で連携し、世界をリードしていきたいとの抱負を述べた。
■ 排出量取引制度をめぐる懸隔
一方、排出量取引制度をめぐっては、経団連との間で意見が分かれた。デイビーエネルギー・気候変動相が、排出量取引制度はエネルギー多消費産業の排出削減を促すうえでコスト効率的との見方を示したのに対し、経団連側は、排出量取引制度が実排出削減を促進し、低炭素・省エネ投資を加速する効果については疑問を呈した。ただし、「低炭素社会を実現するには企業活動にキャップを課すのではなく、イノベーションを生み出すことが不可欠」とする経団連側に対し、デイビー・エネルギー・気候変動相も、「排出量取引制度のみですべてを解決できるわけではなく、基準や規制、さらに資源の有効利用等、分野ごとに最適な排出削減策を講じることが必要」と応じた。
■ 原子力の多面的な便益
最後に、デイビー・エネルギー・気候変動相は、日本における原子力への懸念を十分理解するとしつつ、(1)エネルギー安全保障(2)経済性(3)CO2削減目標への取り組みという3点において、原子力の便益は極めて大きいと力説し、わが国における原子力発電所の維持に期待を寄せた。
【環境本部】