経団連は11日、「『民法(債権関係)の改正に関する中間試案』に対する提言」を公表した。
政府の法制審議会民法(債権関係)部会では、2009年11月から、契約に関する規律の見直し作業が進められている。同提言は、4月に中間試案がパブリックコメントに付されたことを受け、取りまとめたものである。
今回の見直しは大部に及ぶため、提言では総論的な意見を述べたうえで、中間試案に掲げられた各論点に対する意見を示している。
提言では、個々人が自由な意思に基づき法律関係を形成することができるという民法の私的自治・契約自由の原則をゆがめるような改正はすべきではなく、長年にわたって積み重ねられてきた既存の実務を踏まえた慎重な検討を行うよう求めた。提言の概要は次のとおり。
1.民法の現代化について
民法制定当時からの社会・経済の変化を踏まえ、民法を現代の取引に適合したものとすることには賛成である。しかし、民法に新たなルールを明文化すべきかは、項目ごとに十分に慎重な検討が必要である。
例えば、中間試案は現代の多くの取引で用いられている約款についての規律を設けることを提案しているが、反対である。
実務において、約款が契約内容となることについてはほとんど疑問の余地はない。他方、国民生活にとって重要性が高い約款は、すでに各種業法や消費者契約法といった特別法で規律されている。既存の枠組みで解決できない問題が生じているのであれば、取引の実態に即して特別法で検討する方が問題の解決に資する。
2.わかりやすい民法について
確立したと認められる判例法理を民法に明文化し、条文からルールを理解できるようにすることは国民一般の利便に資するものであり、賛成である。
ただし、本来、判例は個別的な事案を解決するための判断であり、その判例で示された考え方を広く一般的に適用される民法において規定すべきかは、十分に慎重な検討が必要である。
例えば、中間試案では、相手方の困窮や経験・知識の不足に乗じて利益をむさぼるような暴利行為を無効とする法理を明文化することを提案している。しかし、裁判で暴利行為が認められたのは、特別な事情に基づく極めて例外的な場合である。そのような例外的な判断が民法に規定されれば、法理の濫用を招き、契約関係が不安定になることが懸念されることから明文化すべきではない。
3.特定の政策目的を有する規定の民法への導入
当事者の一方に情報提供義務を課す規律や、事業者・消費者といった概念を前提に当事者間の格差を考慮すべきといった特定の政策目的を有する規定を民法に導入することには反対である。
わが国では、すでに消費者契約法が当事者間の情報格差等を前提とする規律を設けており、民法に重ねて規律すべきではない。むしろ、そのような規律を民法に導入した場合、特別法との関係が不明確となり、改正で追求しているわかりやすさを害しかねない。
※全文はホームページ(URL=http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/058.html)に掲載。
【経済基盤本部】