経団連(米倉弘昌会長)は、インドのマンモハン・シン首相の来日にあわせて5月29日、東京・大手町の経団連会館で、シン首相に同行して来日したインド経済界代表とともに、「日印ビジネス・リーダーズ・フォーラム2013」を開催した。同フォーラムは、2006年の日印首脳会談の合意に基づき、両首脳の相互訪問にあわせて開催することを慣例としており、今回は日本側から米倉弘昌会長ら13名、インド側からババ・カリヤニ・バラット・フォージ会長兼マネージング・ディレクターら13名が出席した。
■ 共同議長あいさつ
日本側の議長である米倉会長は冒頭あいさつで、「11年8月の日本・インド包括的経済連携協定(CEPA)の発効以降、両国の経済関係は一段と深まっており、インドに進出している日本企業は約930社に上る。CEPAを土台とし、インドと日本の貿易・投資を一層拡大し、両国経済協力のさらなる高度化を図るべく、経済界の立場から具体的な提言を行いたい」と述べた。
一方、インド側議長のババ・カリヤニ共同議長は、「日印関係の歴史は古く、かつては文化交流、貿易、人的交流も盛んであったが、現在の二国間の貿易関係はわずか180億ドルであり潜在量に比して極めて少ない。インドでは、外資による複数ブランド小売業の規制緩和をはじめ、外国投資誘致等の経済成長を促進する政策が打ち出されており、今後の関係強化につながるものと期待している」と述べた。
■ 意見交換
意見交換では、(1)ビジネス環境整備(2)インドにおけるインフラ整備の重要性と日印協力の推進(3)戦略的分野における協力の強化(4)日印協力の広がりと可能性――の四つのテーマについて意見交換を行った。
「ビジネス環境整備」では、日本側は、インドにおける複雑な間接税体系を簡素化する物品サービス税の早期導入や、金融分野での外資規制のさらなる緩和について理解と協力を求めた。一方、インド側からは、ビザ発給の迅速化・簡素化、日本におけるインドの農産物・海産物に対する非関税障壁の撤廃について日本側の理解を求める意見が出た。
「インドにおけるインフラ整備の重要性と日印協力の推進」では、デリー・ムンバイ産業大動脈構想について、日印双方がその進捗を歓迎した。また、日本企業の提供する高付加価値のインフラに対する公平な評価や環境関連技術に関連する法整備を求めた日本側に対し、日本企業の負担軽減にインドの開発公社が貢献している点や、低コストでの資金調達を可能にする金融規制緩和が行われている点について、インド側から紹介があった。
「戦略的分野における協力の強化」では、日本側が、海上安全分野、人材育成での協力推進に加え、石炭火力発電、原子力発電など、エネルギー分野での協力が重要である点を指摘した。インド側は、海外でのガス資源の共同開発、ガス・ハイドレートの研究開発等においても、両国協力が必要であると述べた。
「日印協力の広がりと可能性」では、日本側から、観光分野での協力のほか、5月初旬に交渉が開始された東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)が、CEPAを補完する質の高い協定となるよう、両国の官民の連携を求めた。一方、インド側は、サイバーセキュリティー分野での両国の連携、日本企業のインドでの現地製造、技能公証の必要性を指摘した。
■ 共同報告書手交
今回の議論を踏まえ、共同報告書を取りまとめ、同日夕刻、日印共同議長からシン首相、安倍首相に提出し、その実現を要請した。
【国際協力本部】