経団連の日本ロシア経済委員会(岡素之委員長)は4月14日から20日にかけて、ハバロフスク、ウラジオストクに曽根貴史極東部会長を団長とする訪ロシア極東ミッションを派遣した。同ミッションでは、極東・東シベリア地域の経済発展政策についてロシア連邦・地方政府関係者等から聞くとともに、事業環境の一層の整備を働きかけた。
■ 政府による具体的な政策を把握
プーチン大統領の下、ロシア政府は成長著しいアジア太平洋諸国との関係強化に向けて、極東・東シベリア地域の開発を積極的に推進している。その一環として連邦政府は、ハバロフスクを拠点とする極東発展省の新設や、今後の極東開発の指針となる「極東バイカル地域社会経済発展国家プログラム」の策定を行うとともに、目標総額10兆ルーブル(約30兆円)を超す資金投入を実施しようとしている。
また、地方政府も経済特区の設置、税制面での優遇措置の導入、投資活動を行う外資への支援を目的とする組織の設立など、外資に対する誘致政策を用意していることが確認された。これらは、同地域の開発に向けた投資呼び込みに対するロシア政府の真剣な姿勢を示すとものと考えられる。
■ 経済発展の潜在力を確認
懇談を通じて、極東・東シベリア地域は日本と地理的に近接し、ロシアの東の窓として重要な役割を果たすとともに、空港、港湾、道路をはじめインフラの増強も進むなど経済発展の大きな潜在力を有することが確認された。実際、同地域における日本企業の活動は、エネルギーや天然資源分野を中心としたものから、最近では自動車産業が製造拠点を設けるなど多様化しつつあり、事業機会のさらなる拡大を十分に見込むことができる状況であった。
懇談のなかでは、ロシア側から、今後の新規案件としては、石油・ガス化学工業、航空機産業、造船業、自動車産業、医療事業、農業なども有望であるとの提案があった。
■ 事業環境整備に向けて働きかけ
ミッションでは、日本側から、物流インフラの整備や通関制度の円滑化を中心に、ビジネス環境整備に関する具体的な要望を伝えた。これに対してロシア側から、(1)鉄道と税関のシステム統一など鉄道輸送のサービスや品質向上に取り組んでいる(2)税関と国境警備や港湾企業の間で貨物の滞留期間の短縮に向けた協議を重ねている(3)電子申告の導入などにより税関手続の簡素化を実現している――といった返答があった。また、日本企業が事業活動を行うなかで、気づいたことがあれば何でも指摘してほしいと呼びかけるなど、改善に積極的に取り組む姿勢も見られた。
ロシア側から提示があった改善策については、経団連として、その進捗を随時確認するとともに、事業環境の一層の整備に向けて引き続き必要な働きかけを行うこととする。
【国際経済本部】