経団連は、提言「次期総合物流施策大綱に望む」を取りまとめた。
現在、国が7月の閣議決定を目指して議論を進めている「総合物流施策大綱(以下、大綱)」は、1997年以降、これまで四次にわたり策定された。この間、アジア近隣諸国が高い経済成長と国策による物流インフラ整備によって産業の競争力を高めてきた一方で、わが国は競争上劣位な状況に陥った。
そこで、次期大綱が、わが国産業の競争力強化、ひいては国民生活の向上につながるよう、産業界の考え方を取りまとめたもの。提言の概要は次のとおり。
■ 産業界が望む次期大綱策定の基本的な考え方
産業界が望む次期大綱策定の基本的な考え方は、大きく三つある。
第一は、わが国全体で陸・海・空のネットワークや関係する施策の連携のあり方を示したグランドデザインを政府が描くということである。
第二は、各種産業政策や国の成長戦略などを踏まえ、国として目指すべき方向性を共有化したうえで、施策の優先順位づけの考え方を示すべきという点である。
第三は、施策の具体的な目標水準・達成時期の明示や、進捗状況のフォローアップといった、PDCAの着実な実施である。
■ 産業の国際競争力強化の観点から重視すべき施策
この考え方を踏まえ、国際競争力強化の観点から重視すべき施策を、三つに整理した。
第一は、大綱の計画期間(5年)で集中的に取り組むべき施策として、物流インフラが有機的に連携する観点から、港湾、空港、高速道路、鉄道、船舶に関する9項目の施策を求めた。また、貿易円滑化に向けた取り組みとして、輸出入手続きのさらなる効率化や、貨物にかかるセキュリティー・安全基準の国際標準化への対応など3項目の施策を、さらには、物流・インフラシステムの国を挙げた海外展開の促進や、進出相手国企業との競争条件のイコールフッティングなど、海外展開に向けた施策を求めた。
第二は、将来の環境変化を見据えて、中長期的な観点で戦略的に取り組む施策である。目前の課題に対応するだけでなく、将来のシナリオを想定し、その際に必要となる施策を現時点から検討していくことが必要となる。具体的なシナリオとして、将来のエネルギー政策を見据えたインフラの整備、経済連携協定の拡大に対応した施策の検討、少子高齢化や厳しい財政事情を踏まえた交通・物流インフラのあり方の検討を示した。
第三は、期限にかかわらず取り組む必要がある、安全・安心につながる施策や構造的な課題への対応である。具体的には、物流インフラの老朽化・防災対策や物流にかかわる人材の育成、海賊・テロ対策といった通商路の安全確保、さらには環境への配慮を求めた。
なお、物流環境を改善するためには、これらの施策だけでなく、荷主と物流事業者の連携・協力の強化が欠かせない。また、これらの取り組みが結果的に生活の向上につながるということを、政府広報等を通じて国民に正しく伝え、理解を醸成することも必要である。
【産業政策本部】