経団連(米倉弘昌会長)は10日、提言「独占禁止法改正法案(審判廃止)の早期再提出・成立を求める」を公表した。また同日、経団連と同様に審判廃止を求める、日本商工会議所、経済同友会、全国中小企業団体中央会、関西経済連合会、在日米国商工会議所との共同提言「公正取引委員会審判制度廃止の早期実現を求める」もあわせて公表した。これらの提言は、わが国の成長戦略実現に向けた環境整備の一環として、公正取引委員会の審判制度廃止を求めたもの。
概要は次のとおり。
1.現行の審判制度の問題点
2005年の独占禁止法改正以前は、公取委による勧告、審判という手続きを経て排除措置命令などの行政処分が出される「事前審判制度」が採られていた。その後05年の法改正により、公取委による課徴金納付命令等の処分を下した後、これに不服がある場合は審判を申し立てる「事後審判制度」が採用されるに至った。
しかし事後審判制度は、処分を下した公取委自身が、その処分に対する不服申立制度を主宰し、公取委がいわば検察官と裁判官を兼ねる構造となっており、手続的な公平性・中立性を欠くと同時に、グローバルスタンダードにも合致しない制度となっている。
2.改正法案をめぐる動き
経団連は法改正直後から、公取委による審判制度を廃止し、違反事件に対する第一審機能を司法手続に移すよう提言してきた。近年では、日本国内企業のみならず海外の経済界からも、同制度に対する強い批判が寄せられている。
こうした経済界の主張を踏まえ、09年の独禁法改正の附帯決議では、審判についての全面見直しを行うこととされた。その後、先の附帯決議を踏まえて、民主党政権時代の2010年3月に、公取委による審判制度を廃止し、独禁法違反事件に対する争いについては裁判所で行うこととする独禁法改正法案が国会に提出された。
経団連では、同法案の早期成立を強く期待し、再三にわたり審議促進を求めたが、同法案は一度も審議されることのないまま昨年11月の衆議院解散により廃案となった。
3.審判制度廃止に向けて
経済のグローバル化が進む経済環境においては、国内外の企業が安心して事業活動を行えるよう、競争環境基盤についてもイコールフッティングを確立することが必要である。
そこで、先般廃案となった独禁法改正法案を、今国会に速やかに再提出し、迅速に成立させることが、わが国の成長戦略実現の観点からも重要である。経団連は改正法案の早期再提出に向けて、他の経済団体とも協力しながら働きかけを行っていく。
【経済基盤本部】