経団連は22日、提言「サブサハラ・アフリカの持続可能な成長に貢献するために」を発表し、関係各方面に建議した。
今年6月に第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が横浜で開催される。TICAD V では、アフリカの持続的成長に資する産業の発展と民間部門の役割が議論されるため、日本政府は昨年夏に「TICAD V 推進官民連携協議会」(共同座長=坂根正弘経団連副会長、岸田文雄外務大臣)を発足させ、対応について検討している。提言は、同協議会での検討に経済界の意見を反映させるため、会員へのアンケート結果を踏まえ、取りまとめたものである。概要は次のとおり。
1.基本的考え方
提言ではまず、サブサハラ・アフリカを将来の有望な消費市場、資源供給基地として位置付けている。そのうえで、(1)日本企業の進出状況を踏まえて重点国・地域を特定し、各国の特性と発展段階に応じて、個別具体的に協力を推進すること(2)アフリカの持続的な成長のため、内陸国と沿岸国の連結性を念頭に広域的にインフラを整備し、資源・エネルギー開発、直接投資誘致や産業振興のための基盤を形成すること――を提言している。
2.インフラ整備による成長エンジンの活性化
官民連携によるインフラ整備を通じて成長のボトルネックを解消する観点から、提言では、日本企業がすでに進出している国・地域を中心に、戦略的マスタープランを策定し、政策対話を通じてこれを着実に推進するよう求めている。また、TICAD V の予算枠を設け、円借款、無償資金協力の規模を拡大するとともに、JICA海外投融資、JBIC投融資等により民間事業を支援することが不可欠であるとしている。
3.貿易投資の活性化
アフリカ諸国に多く存在する外資制限、過度なローカルコンテンツ(注1)要求、ロイヤルティーの送金規制等を解消し、貿易投資を活性化するための具体策として、提言ではモザンビーク、アンゴラとの投資協定を早期に実現するとともに、将来的には南部アフリカ開発共同体(SADC)等との間でEPAを締結することを求めている。また、重点国との間でビジネス環境整備に関する官民政策対話の場を設置し、国内法の不透明性、過度な国内規制、知的財産権に関する制度や税制の不備に起因する問題を解決するよう提唱している。
4.農業開発への貢献
食糧の安定供給を図るべく、道路、穀物倉庫、コールドチェーン(注2)等のインフラ整備のほか、ポストハーベスト(収穫後)技術の改善など、バリューチェーン全体を俯瞰した政策を通じた農産物の市場アクセスの向上を提言している。
5.持続可能な成長のための基盤づくり
インフラ整備、貿易投資の活性化を通じてアフリカの成長を実現するためには、(1)即戦力となる産業人材の育成(2)環境・エネルギー問題への対応(3)公的医療保険制度をはじめとする医療の向上(4)治安の向上ならびにシーレーンの安全確保――等が大前提であり、提言ではそのための方策を示している。
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経団連では提言の内容を「TICAD V 推進官民連携協議会」における議論に反映させるとともに、重点国について個別に経済開発のための戦略を立案し、官民連携で取り組んでいく。
(注1)ローカルコンテンツ=外国企業の進出に際し、受け入れ国が一定の割合以上の部品等の現地調達を義務づけること
(注2)コールドチェーン=生鮮食料品を生産者から消費者まで、冷凍、冷蔵、低温の状態で一貫して流通させるシステム
【国際協力本部】