経団連は22日、安倍政権発足を機に、農業政策に関する考えをあらためて整理し、提言「わが国農業の競争力強化と成長産業化に向けた取り組みの加速を求める」として取りまとめ、公表した。
提言では、農業は国民への食料供給のみならず、地域の基幹産業としても極めて重要な役割を担っていると位置付ける一方で、農業従事者の高齢化と後継者不足、耕作放棄地の拡大等により危機的な状況にあり、大胆かつ抜本的な改革が急務となっていると指摘。農業の競争力向上と成長産業化、その基盤としての直接支払制度の改革を進めることにより、力強い国内農業を早期に確立し、環太平洋パートナーシップ(TPP)をはじめ経済連携協定との両立を実現していくべきとしている。
1.農業の競争力強化
農業の競争力強化では、企業を含む経営感覚あふれる担い手を広く確保し、これら担い手へ農地を集積し、規模拡大と生産性向上を図る必要があると指摘。
具体的には、農業生産法人の構成員要件の緩和、リース方式での参入法人による一定要件の下での農地取得の容認、新規就農支援策の拡充等を求めている。
また、政府は、2012年4月から2年間で、市町村・集落内での話し合いを通じて、地域内の中心的な担い手や農地集積計画等を定める「人・農地プラン」の策定を進めており、その早期策定と内容の充実に向けた支援策のさらなる充実・強化が重要と指摘。特に、農地集積を一層促進するため、農地の受け手や出し手に対する税制上・財政上の支援策やプランと連携を図るかたちでの基盤整備事業の充実を要望している。
2.農業の成長産業化
農業の成長産業化では、農商工連携・6次産業化の推進強化の重要性を指摘。このため、農業分野におけるICTの利活用推進に向けた事業環境の整備や東日本大震災被災地域における農業復興の加速等を求めている。
また、農産物等の輸出促進のため、わが国農産物等に対する諸外国・地域の輸入規制の緩和・撤廃や輸出促進に向けた制度・体制の整備等を提言している。
3.直接支払制度の改革
直接支払制度の改革では、現行の農業者戸別所得補償制度を、「効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造」を確立するための構造政策の一環として位置付けるべきと主張。認定農業者や「人・農地プラン」での中心経営体等、大規模で効率的な農業経営体に対するインセンティブ措置として重点化し、支援対象や支援水準等を抜本的に見直す必要があることを指摘している。
また、TPP等の経済連携と国内農業の両立を実現するためのセーフティーネットとして、国境措置の見直しにより外国産品との生産条件の格差が拡大・顕在化する際に、その不利を補正するための制度の拡充も求めている。
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これらを総合的に実施することを通じて、農業生産による食料供給機能の強化と地域の活性化を図っていくべきとし、経済界もその実現に最大限協力していくとしている。
【産業政策本部】