経団連は22日、提言「科学技術イノベーション政策の推進体制の抜本的強化を求める」を公表した。提言は、科学技術イノベーション政策を国家の重要戦略として強力に推進するため、推進体制の抜本的強化に向けた経団連の考えを示したもの。概要は次のとおり。
1.基本認識
わが国は現在、震災からの復興・再生やデフレ経済の長期化等、さまざまな課題に直面している。こうしたなか、産業競争力を強化し、持続的な経済成長を実現するためには、科学技術イノベーション政策を国家の成長戦略の柱に据え、強力に推進することが不可欠である。
わが国では、2011年8月に閣議決定された第4期科学技術基本計画において、科学技術の振興を主目的とする従来の政策から、課題解決型の科学技術イノベーション政策へと大きく方針が転換されたが、具体的な取り組みは十分に進んでいないのが現状である。今後は、総合科学技術会議の司令塔機能を強化したうえで、日本経済再生本部等との連動性も確保しつつ、イノベーション創出を国家の重要戦略として推進することが急がれる。
こうした観点から、新政権に対し、「強力な司令塔の実現」「ファンディングの仕組みの改革」「大学・大学院の改革」「科学技術予算および研究開発促進税制の拡充」の4本柱からなる改革の早期実現を強く求める。
2.改革の4本柱
(1)強力な司令塔の実現
科学技術イノベーション政策を府省横断で推進するためには、強力な司令塔の実現が不可欠であり、政策を企画立案および推進する法的権限を総合科学技術会議へ付与するとともに、予算配分への影響力の強化等を図ることが必要。あわせて、総合科学技術会議が選定した最先端の研究開発を複数年度にわたって支援する「最先端研究開発支援プログラム」の後継プログラムの創設や、規制改革、高等教育政策、知的財産政策、国際標準化戦略等の関連政策の一体的推進、既存の政府系シンクタンクを活用した調査分析機能の強化等が重要。(2)ファンディングの仕組みの改革
現在のファンディング(注)は各省ごとの方針に沿って実施されているが、基礎研究から実用化・事業化までを産学官で一体的に推進できるよう、総合科学技術会議の主導のもとでファンディング機関間の連携を強化するとともに、実用化・事業化に向けた産学共同研究への支援を拡充すべき。(3)大学・大学院の改革
諸外国に比べてイノベーション創出という視点に乏しいわが国の大学・大学院の改革に向け、研究開発および教育の双方に関する評価体制を整備したうえで、評価結果に基づき運営費交付金を傾斜配分する仕組みを構築することが重要。あわせて、大学・大学院のガバナンスの強化、イノベーション人材の育成強化、目的基礎研究や実用化に向けた研究開発の促進が必要。(4)科学技術予算および研究開発促進税制の拡充
第4期科学技術基本計画で掲げられた「政府研究開発投資対GDP比1%、総額約25兆円」の予算目標を確実に達成するとともに、企業による研究開発投資の促進に向け、研究開発促進税制の拡充を図ることが不可欠。
(注)ファンディング=研究開発を行うために必要となる公的資金を配分すること
【産業技術本部】