経団連は20日、提言「豊かな生活を形づくるための住宅政策のあり方」を取りまとめ公表した。近年、雇用・所得環境の悪化などにより、わが国の住宅投資は大幅に縮小しているが、住宅そのものは社会生活や経済活動の基盤であり、内需の大きな柱であることに変わりはない。住宅に対するニーズは、高齢社会への対応に加え、東日本大震災をきっかけに耐震化や省エネ化への関心も高まっている一方、老朽化対策や、流通・リフォーム市場の整備などの対策も含めて、道半ばの状況にある。そこで、今般、あらためて住宅・住環境の整備を国家的な課題として認識し、官民一体で取り組んでいくために、今後の住宅政策に求められる視点を整理するとともに、豊かな生活を形づくるための政策について提言した。
■ 今後の住宅政策を考えるにあたっての10の視点
住宅の質・機能のさらなる充実に向けた視点として、五つを提示した。
- (1)東日本大震災の経験などを踏まえた、耐震化、省エネ化、高齢化対応に向けた取り組みの強化
- (2)住宅を多世代もしくは複数世帯にわたって住み継ぐために、リフォームの促進による品質・性能の向上や、住宅ストックを流通させる市場の整備
- (3)新築をより重視しがちな国民の意識を、メンテナンスなどにも注力することで、住宅を長持ちさせ、多世代に引き継いでいく方向に変えていくこと
- (4)ライフスタイルや価値観の多様化などに応じて住み替えが可能となる市場の整備
- (5)家族構成や暮らし方に応じたゆとりある居住空間の実現
これら個々の住宅への対応に加え、魅力あるまちづくりを実現するための視点として三つ掲げた。
- (6)密集市街地や老朽化した大規模な共同住宅などの課題に対応しつつ、スマートシティーの形成促進などにより、環境・エネルギー等の社会問題に対応すること
- (7)ふれあいと活力の実現を図り、「コミュニティーが存在する街」を構築すること
- (8)街並みや景観を改善し、美しい街を形成するための取り組みの強化
これらに加え、住宅産業自らが成長・発展し続けるための視点として二つ示した。
- (9)住宅産業が、より一層視野を広げることで、幅広く内需の活性化を図り、住宅投資を内需の大きな柱に育てていくこと
- (10)住宅産業が他の製造業と同様に、新たな需要が見込まれる海外へ積極的に展開し、グローバル産業へと発展していくこと
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■ 新しい産業を形づくるための政策の実現
将来にわたって住宅投資の回復を展望するためには、成長戦略を着実に実行し、雇用拡大・所得環境の改善を図ることが重要な前提である。加えて、上記10の視点を実現するために、消費税の対応と特例措置の延長を中心とした税制面の対応、質の高い住宅の普及促進につながる予算措置の充実、規制緩和の促進、さらには海外市場に成長の場を求める企業に対する支援といった政策面での措置を求めた。
【産業政策本部】