経団連(米倉弘昌会長)は20日、「社会保障制度改革のあり方に関する提言」を取りまとめ、公表した。提言の概要は次のとおり。
■ 置き去りにされた社会保障改革
社会保障・税一体改革関連法の成立により、消費税収が社会保障給付の安定財源として確保されることとなった。しかし本来、消費増税と一体であるべき社会保障改革の主要事項は、「社会保障制度改革国民会議」の場で議論を行い、来年8月までに結論を得ることとされ、事実上の先送りとなった。
そこで提言では、社会保障制度改革国民会議における検討に向け、持続可能で成長と両立する制度改革の実現を訴えた。
■ 給付の効率化・重点化と社会保険料・税の一体的見直し
世界に類例のないスピードで進行する少子高齢化を背景に、社会保障制度の支え手である現役世代は減少する一方、高齢化に伴う社会保障給付費は、年々増加の一途をたどっている。こうしたなか、2015年度にかけて消費税率を段階的に10%まで引き上げたとしても、2025年度時点の勤労者世帯当たりの社会保険料負担額は年間25万円程度増加し、事業主負担も総額12兆円程度上昇すると見込まれている(いずれも2011年度対比)。
こうした状況を放置すれば、家計の消費の抑制や企業の生産コストの上昇を通じて、わが国の立地競争力は低下し、企業の生産拠点の海外移転や国内の雇用機会の喪失など、国民生活に著しい不利益が生じることが懸念される。
そこで、社会保障給付の一層の効率化・重点化の推進と、社会保険料と税の一体的見直しを通じた、自助・共助・公助の役割分担の明確化(自助を基本としつつも、自助でまかないきれないリスクは「社会保険料」による「共助」、保険原理を超えたリスクへの対応や世代間扶助は「税」による公助)が急務である。
■ 社会保障各分野における改革の断行
提言では、(1)医療(2)介護(3)年金(4)少子化対策――の社会保障各分野における現下の課題や、制度改革の方向性、給付の効率化・重点化に向けた具体策を提示した。
また、持続可能で成長と両立する制度改革に向けて、(1)社会保障構成財源の見直し(2)マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)の早期実現(3)2025年度に向けた政策展望(4)成長戦略と整合的な改革――の必要性を強調した。
■ 求められる政治決断
活力ある経済社会を維持していくためには、将来世代にツケを回さず、現世代が給付の適正化を含む厳しい改革を甘受する必要がある。改革の実現に向けた、党派を超えた政治のリーダーシップを期待する。経済界としても、国民各層の理解と納得を得られるよう、努力していく。
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【経済政策本部】