経団連は6日、東京・大手町の経団連会館で、社会保険料・労働保険料の賦課範囲見直しについての実務担当者向け説明会を開催した。当日は、厚生労働省の担当者から、社会保険料の算定における通勤手当および現物給与(住宅の貸与や食事の支給など)の取り扱いについて説明を聞いた後、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 社会保険料・労働保険料の賦課範囲見直しの目的・経緯
社会保険においては、報酬について、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受け取るすべてのものをいう」と規定し、通勤手当等各種手当を保険料算定の基礎として取り扱っている。しかし、通勤手当を社会保険料の賦課対象とすることは公平性の観点から問題であるとの指摘があったこと等を踏まえ、辻泰弘前厚生労働副大臣の発意により、今日的な報酬等の範囲に関する検討会を省内に設置。9月中に3回にわたって議論を行った。
■ 通勤手当の取り扱い
通勤手当を保険料の算定対象から除外することについては、他の手当と取り扱いを区別する論拠が必要といった理論上の課題、保険料収入の減少への対応という財政上の課題、さらに企業規模、業種、所得水準などによる支給状況の違いによる大企業から中小企業への負担の移転という社会的影響の課題がある。こうした点について議論が行われたが、学究的な課題として、検討を継続していくこととなった。
■ 現物給与の取り扱い
現物給与について、一括適用事業所と異なり、本社のみが適用事業所となっている場合には、本社の所在地の現物給与の価額を適用することとしている。しかし、これは生活実態に合わないため、今回の議論の結果、一括適用事業所と同様、勤務地(現に使用される事業所)の都道府県の現物給与の価額を適用することとしたい。
この見直し案について今後、11月中旬からパブリックコメントを開始し、来年2月以降にホームページ等で周知活動を行ったうえで、4月に施行する予定である。
<意見交換>
出席した委員からは、「通勤手当が除外されても、給付水準を維持するために保険料率が上がってしまえば、通勤手当を除外することによるメリットはない」との意見があった。これに対して厚労省は、「通勤手当の取り扱いについては、財政と切り離して考えることはできないが、そのなかでどのような方策をとれば公平性が保てるのかなど、いろいろな観点から今後議論をしていきたい」と答えた。
【経済政策本部】