経団連とACCJ(在日米国商工会議所)は、共同で設置した「日米クラウドコンピューティング民間作業部会」において報告書を取りまとめ、10月18日に米国国務省(ワシントンDC)で開かれた「インターネットエコノミーに関する日米政策協力対話」(第4回局長級会合)会合に提出した。同会合は、日米首脳会談で発表された日米関係の強化・拡大を目指す「日米協力イニシアティブ」の一環として位置付けられている。日本の産業界代表として、経団連情報通信委員会の武山芳夫企画部会長が出席し意見を述べるとともに、同作業部会で報告書の取りまとめにあたった梶浦敏範主査、横澤誠副主査から、クラウドをめぐる政策課題について説明した。武山部会長の発言要旨は次のとおり。
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利便性、コスト、耐災害性に優れたクラウドコンピューティングへの流れは、一時の技術的流行にとどまらず、今後さらに加速していく。しかし、国や地域を容易に越えるというクラウドの技術的特徴は、従来の法制度の枠に納まらないものであり、各国ごとの法制度の国際的な調和が不可欠である。こうした観点から、日米の産業界は協調と協力の精神に基づき、日米両政府に対しクラウドの世界的普及に向けた五つの共同提案を取りまとめた。
その第一は「オープンで透明なインターネットの堅持」である。インターネットがイノベーションの源泉であり続けるためには、政府による中央管理ではなく、マルチステークホルダーによる取り組みとすべきであり、この点について日米両政府と産業界が協調していくことが重要である。
第二は「国際的に調和のとれたデータ越境移転ルールの構築」である。利用者保護の観点から、インターネット上の情報流通に対する管理方法を見直す動きがあるが、日米がリーダーシップを発揮して、個人情報の保護と利便性とが両立するよう、データ保護にかかる法制度の国際的な調和に向けて取り組むべきである。
第三は「日米政府CIO(最高情報責任者)の協力強化」である。日米両国の政府CIOが協力し、IT政策の計画・遂行に際し、産業界と継続的に意見交換をする場を設けてほしい。
第四は「安心して利用できるインターネット環境の確保」である。日米両政府と産業界は、新たに生まれる脅威や懸念事項について定期的に意見交換する場をつくり、敏速かつ実効的に対応すべきである。
第五は「世界規模でのクラウドビジネスの促進」である。日米が協力して、まずは日・米・アジアで共通のクラウド推進モデルを開発し、欧州やその他諸国へ波及させていくことが望ましい。
【産業技術本部】