経団連は10月26日、東京・大手町の経団連会館で、阿南久長官をはじめ消費者庁幹部を招いて懇談会を開催し、「消費者行政に対する課題と期待」をテーマに意見交換を行った。
冒頭、阿南長官があいさつし、消費者庁設置に先立つ2008年、福田康夫元総理が消費者庁創設に向けて示した「消費者の利益にかなうことは、企業の成長をもたらし、産業の発展につながる」という原則を認識して、職務に取り組みたいと述べた。また、消費者基本法の趣旨を踏まえ、事業者に対し、消費者への明確で平易な情報提供や、苦情相談窓口の整備に積極的に取り組むよう求めた。
その後、消費者庁の担当課長から、(1)今年10月に設置した消費者安全調査委員会の概要(2)食品衛生法、JAS法、健康増進法に基づく表示を一元化するための食品表示法(仮称)の検討状況(3)今年8月に成立した消費者教育推進法の概要――などについて説明があった。
引き続き経団連から、企業行動委員会の室町正志消費者政策部会長が、企業は消費者の満足と信頼を獲得すべく、自主的かつ積極的に消費者問題に対応すべきであり、経団連として企業行動憲章等を通じて会員企業に自主的な取り組みの推進を働きかけていることを紹介した。また、悪徳な事業者と健全な事業者を峻別し、健全な事業者を委縮させるような法規制を行わないよう求めた。次に、経済法規委員会の土屋達朗消費者法部会長から、集団的消費者被害救済制度について、濫訴を防止するため、訴訟を提起できる主体を限定するとともに、対象となる事案を、被害が少額であり、かつ争点の共通性、支配性を有するものに限定することなどを要望した。あわせて、消費者の財産被害にかかる行政手法の検討について、課徴金や財産保全の要件、対象を慎重に検討するよう求めた。
さらに出席者から、「集団的消費者被害救済制度について、濫訴を招かないようにすべき」「消費者安全調査委員会の事故調査について、調査を受ける事業者にも意見を述べる機会を与えるべき」「食品表示について、現実的な議論が行われるよう、検討会等の人選に配慮すべき」といった意見が出された。
これに対し阿南長官から、「悪徳な事業者を排除して健全な市場を形成することは、消費者庁の重要な責務であり、心して取り組みたい」「消費者庁として消費者と事業者との交流を促していきたい」といった抱負や、「消費者教育の推進にあたって、企業が有する優れたノウハウを活用することが重要である」といった考えが示されるとともに、担当課長から、それぞれ取り組みについて説明があった。
【政治社会本部】