経団連の防災に関する委員会(橋本孝之共同委員長、柄澤康喜共同委員長)、国民生活委員会(川合正矩共同委員長、木村惠司共同委員長)は7月27日、東京・大手町の経団連会館で、中川正春内閣府特命担当大臣(防災)を招き、合同委員会を開催した。
冒頭、政府における防災対策、新型インフルエンザ対策の現状と課題について、佐々木克樹内閣府大臣官房審議官(防災)、杉本孝内閣官房新型インフルエンザ等対策室内閣参事官から説明を受け、その後中川大臣から、両政策課題における官民連携のあり方などについて講演を聞くとともに、意見交換を行った。
■ 中川大臣講演
中川大臣は、まず災害や新型インフルエンザ等のリスクへの対応を進めるにあたって、「レジリエント(Resilient)な社会の構築」「現場の即応力の重要性」「情報と科学技術の活用」の三つを重視しているとしたうえで、まず防災対策について、財源が限られるなかにあっては、「防災の主流化」との考えのもと、あらゆる分野の施策について、防災の観点を組み込むことが重要だと述べた。加えて、社会全体でのBCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)の実効性向上に向けて、基盤整備など国の関与について、民間企業からの意見を求めるとともに、津波対策に関して、例えば津波避難ビルの建設にあたっては、避難だけを目的にするのではなく、商業店舗や公営施設等との複合施設を、PFI(Private Finance Initiative、民間資金の活用による社会資本整備)の手法も活用して整備するなど、民間のアイデアを取り入れていきたいと発言した。
続いて、新型インフルエンザ対策について、「政治家と専門家で判断すべき領域、責任をそれぞれ区別することが重要であり、まずは、専門家による有識者会議でワクチン接種の安全性・有効性について責任を持って結論を出してもらうとともに、接種の対象範囲についても検討を行ってもらう」と述べた。
さらに、中川大臣は、国のリスク対策の重要性について、「海外からの投資を呼び込むためにも政治がしっかり災害対策を進め、内外から安心してもらえるような国づくりを進めなければならない。官民が連携して災害に強い社会を構築したい」と強調した。
■ 意見交換
意見交換では、経団連から「防災・減災対策を進めていくうえでは、緊急時に有効であった組織・体制や規制の特例措置などについて過去の事例をリストアップし、公開することが有効である。また、インセンティブの措置などにより民間企業の防災・減災に向けた取り組みを後押しすることが求められる。さらには、発災時の火災、交通、ライフラインなどの状況をリアルタイムで把握し、関係者間で共有・連携するための統合情報基盤が必要だ」「インフルエンザワクチンの接種に関する環境整備について、現行の行動計画による接種ではパンデミックの第一波に間に合わないことが懸念される。有効性・安全性に関する知見を集積したうえで、有効期限の迫った備蓄ワクチンの活用を検討してもらいたい。また、パンデミック時は従業員の4割近くが欠勤すると見込まれており、社会機能の維持のためには法令等の弾力的運用が不可欠である」との意見があった。
これにに対して政府側から、「防災が企業行動にとって合理的であるという社会制度をつくることが重要であり、規制改革やインセンティブが必要だ。大規模災害発生時のICT技術の活用に向けて、防災情報の統合、情報基盤の確立に向けた検討を進めている」「プレパンデミックワクチンの事前接種には時間的なメリットがある一方で副反応の問題があるため、知見の集積が課題であり、行動計画でも安全性等の評価を踏まえ事前接種の段階的拡大を検討すると規定している。厚労省も研究しているが、あらためて専門家の意見をうかがうべき課題と考えている」「パンデミック時の法令の弾力的運用については、東日本大震災時の事例を踏まえながら、検討を深めたい。引き続き経済界とも議論したい」との回答があった。
両委員会では、引き続き政府と連携しながら、災害に強い経済社会の構築に向けて、法制面での対応や民間による取り組みなどを進めていく。
【政治社会本部・経済政策本部】