経団連(米倉弘昌会長)は7月27日、政府が6月29日に提示した「エネルギー・環境に関する選択肢」に関し、意見を取りまとめ、公表した。概要は次のとおり。
各シナリオ共通の問題点指摘/わが国が取るべき選択肢提起
1.エネルギー政策に求められる基本的視点
エネルギー政策に求められる基本的な視点として、(1)安全性を大前提とした、エネルギーの安全保障(安定供給)、経済性、環境適合性の適切なバランスの確保(2)政策の費用対効果、国民生活および企業活動への影響を十分考慮したうえでの、成長や国民生活に必要なエネルギーの確保(3)省エネルギーや再生可能エネルギー技術の開発・普及に最大限努力する一方、エネルギーの需給ギャップが生じないよう、現実的な導入可能量についての十分な精査の必要性(4)リスク分散と資源国に対する交渉力確保の観点からのエネルギー源の多様な選択肢の維持(5)経済との両立を図りながらの地球温暖化対策の着実な推進――が挙げられる。
2.「エネルギー・環境に関する選択肢」の三つのシナリオの評価
(1)各シナリオ共通の問題点
三つのシナリオに共通する問題点としては、次の4点が挙げられる。
- (1)エネルギー需要の前提となる経済成長率が、政府の成長戦略と整合性がなく、エネルギーが成長の制約となりかねない。
- (2)省エネルギーや再生可能エネルギーについても、現行の野心的なエネルギー基本計画を上回る水準に設定され、実現可能性が懸念される。省エネ、再エネのため百兆円を超える投資を見込んでおり、将来の成長に必要な投資を阻害し、産業の国際競争力に深刻な影響を与えかねない。
- (3)いずれのシナリオも電力料金の大幅な上昇、マクロ経済への悪影響が見込まれている。
- (4)温室効果ガスの排出削減について、国際的公平性の検証がなされていない。
(2)各シナリオの評価
「ゼロシナリオ」は、実現可能性において最も問題があることに加え、エネルギー源の多様性が求められるなか、原子力を将来のエネルギー源の選択肢から除外している。
「15シナリオ」は、省エネ、再エネ比率の実現が困難であることに加え、原子力の維持の判断を先送りしている。原子力が維持される見通しが立たなければ、技術や人材の確保に支障を来し、大震災を踏まえた安全技術による国際貢献も困難になろう。
「20~25シナリオ」は、原子力をエネルギー源の一つとして維持する姿勢は評価できるものの、省エネや再エネの導入見通しの実現可能性や電力料金の上昇など問題が多い。
(3)わが国がとるべき選択肢
以上を踏まえれば、「20~25シナリオ」で示された原子力を含む多様なエネルギー源の維持の考えに立ち、次の4点を十分に踏まえ、より現実的なものに再構築する必要がある。そのうえで、5年以内を目途に、抜本的に見直す必要がある。
- (1)安全性確保への不断の取り組みと行政の透明性向上により、国民の原子力発電への信頼を回復する。
- (2)成長戦略との整合性を図るとともに、省エネ、再エネの導入見通しを、現実的なものとする。この結果増加すると見込まれる化石燃料確保に官民一体で取り組む。また、数値目標は幅を持った柔軟なものとする。
- (3)再生可能エネルギーの高効率化・低コスト化の技術革新に官民で取り組むとともに、現行の固定価格買取制度は見直す。地球温暖化対策税や企業別排出削減目標の設定など企業活力を損なう政策はとらない。
- (4)国際約束をする温室効果ガス削減の新たな中期目標は、国際的公平性も十分分析しながら、エネルギー政策と表裏一体で時間をかけて慎重な検討を行う。
【環境本部】