1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2012年8月2日 No.3096
  5. 「国際社会における日本の立ち位置」

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年8月2日 No.3096 「国際社会における日本の立ち位置」 -夏季フォーラム2012 第1セッション

発言する米倉会長

経団連は7月19、20の両日、長野県軽井沢町のホテルで「夏季フォーラム2012」を開催した。フォーラムでの各セッションの概要は次のとおり。

1日目の第1セッションでは、「国際社会における日本の立ち位置」をテーマに、外交評論家・岡本アソシエイツ代表取締役の岡本行夫氏、21世紀政策研究所研究主幹の澤昭裕氏から講演を聞くとともに、来賓を交えて意見交換を行った。

岡本氏

まず、岡本氏は、「外交・安全保障と日本の構図」と題して講演した。具体的には、欧州危機について「もともと政治的統合体として発足したEUが共通通貨を持つことに無理があった」と述べたうえで、「今後の国際社会における脅威として、北朝鮮の金正恩政権やイランの核開発、エジプトにおける『アラブの春』の影響や、サウジアラビアの王位継承問題、世界的な人口爆発が挙げられる」との認識を示した。
また、日中関係については、「トウ小平による改革開放期に学生時代を過ごした親日思想の強い第6世代が、共産党指導部に対する影響力を強めてくれば、日中関係が好転する可能性がある」との見通しを示した。
一方、野田政権の課題としては、「社会保障・税の一体改革では、負担増のみならず、給付制度の中身についての改革が必要である」「FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)を見据えて、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉に早期に参加すべきである」と述べた。
また、日本における抑止力とは、「良好な日米関係を維持することにより、『日本を攻めれば米国と戦うことになる』という認識を周辺国に持たせることであり、そのためには、日米間で首脳同士の相互信頼関係を構築することが極めて重要だ」と述べた。
そのうえで、今後「日本が国際社会に立ち向かうために絶対必要な条件」は、(1)多様性(2)開放性(3)スピード(4)創造力と構想力(5)リーダーシップ――であると指摘した。

澤氏

続いて、澤氏は「いま、何を議論すべきなのか?~エネルギー政策と温暖化政策の再検討」と題して、講演した。具体的にはまず、「わが国のエネルギー政策では、1973年の石油危機後に『量の確保』が、80年代以降に『経済性』が、1997年の京都議定書採択以降に『環境保全性』が課題となった。これら三つの目的を同時に達成することが重要であるが、実際には三つすべてを同時に達成することは難しく、何を優先するかが課題となる」と述べた。そのうえで、政府が示した「エネルギー・環境に関する選択肢」は、「経済性を最も劣後させており、『反経済・産業・雇用』の基本方針に基づいて議論されていることが問題」と主張した。
また、「原子力に依存しない政策に転換する場合、エネルギー政策(量的確保、経済性)を優先するのであれば、火力発電の割合を増やし、温暖化政策を優先するのであれば、再生可能エネルギーを増やすことになる」と指摘した。そのうえで、「再生可能エネルギーについて、今般導入された固定価格買取制度は、国民負担の増大、適地の減少、政策への『飽き』といった要因により、期待するほど再生可能エネルギーの供給量が確保できないことが想定される。その不足分を誰が供給するかについての議論が全く行われていない」と批判した。
最後に、政府には戦略的な対応を、民間・経済界にはダイナミズムを、メディアには深みのある議論を求めた。

その後の意見交換では、外交・安全保障に関して、「官邸のインテリジェンス機能を高めることが重要」「サイバースペースの安全保障を強化すべき」「TPP交渉を前進させるための司令塔がいないことが問題」「国際経済の建て直しのため、新しい通貨制度に向けた国際的合意をつくっていくべき」といった意見が出された。
また、資源・エネルギーに関して、「エネルギー問題が経済成長の足かせにならないようにすべきだ」「まずは福島原発事故の検証と総括を行い、それを踏まえた安全基準を策定すべきである」「原発事故の検証が十分行われた後に、中長期のエネルギー政策にかかる国民的議論を行っても遅くはない」「国内資源が乏しい、島国である、環境先進国である、地震国であるといったわが国の立ち位置や特性等を踏まえて、エネルギーにかかる諸施策を検討すべきだ」といった意見が出された。

【政治社会本部】

「2012年8月2日 No.3096」一覧はこちら