経団連は17日、「新たな海洋基本計画に向けた提言」を公表した。同提言は、政府が策定作業を進めている新たな海洋基本計画に意見を反映させるため、産業界の考えを取りまとめたもの。概要は次のとおり。
■ はじめに
わが国の領海と排他的経済水域の面積は世界6位の447万平方キロメートルである。これに加え、今年4月に国連の大陸棚限界委員会が31万平方キロメートルの大陸棚の延長を勧告した。
新たな海洋基本計画においては、海洋をめぐる環境変化を踏まえ、「海洋権益と海洋安全保障の確保」「海洋開発の基盤強化」「海洋産業の振興と国際競争力の強化」「自然災害の防災・減災」「国際貢献」という五つの基本方針のもとで、各施策の数値目標や達成時期を明示すべきである。
■ 新たな海洋基本計画の重要政策
重要政策の一つ目は排他的経済水域および大陸棚、離島の管理である。国連大陸棚限界委員会に延長が認められなかった大陸棚の追加調査の検討、沖ノ鳥島や南鳥島をはじめ離島の保全・管理を行うべきである。
二つ目は海洋エネルギー・鉱物資源の開発である。まず、政府の海洋データベースを構築する必要がある。
また、海洋エネルギー・鉱物資源については、メタンハイドレート、海底熱水鉱床、石油・天然ガス、レアアースなどを調査・開発する必要がある。
さらに、海洋再生可能エネルギーについては、洋上風力発電の技術を確立して実証実験を推進することが求められる。実証海域の確保のため、漁業協調型システムの整備が必要である。
三つ目は自然災害対策であり、地震や津波の発生メカニズムの解明や、シミュレーションの高精度化、海洋と宇宙の連携による防災・減災対策が必要である。
四つ目は環境問題への貢献であり、CO2を海底に貯留するCCSやエコシップの開発、北極海航路などの開拓、東日本大震災の漂流物・がれき対策が必要である。
五つ目は安全保障の確保であり、わが国の近海における領海警備の強化や、ソマリア沖・アデン湾の海賊対策の強化などが求められる。
このほか、海事産業の強化や人材育成が必要である。
■ 推進体制の強化
政府の総合海洋政策本部の機能を強化し、海洋基本計画をはじめ重要な海洋政策の策定や予算の調整について、司令塔としてリーダーシップを発揮すべきである。
加えて、海洋研究開発機構の機能も強化し、研究成果の利用の促進や技術移転など産業化への貢献を行う必要がある。
【産業技術本部】