経団連の国民生活委員会(川合正矩共同委員長、木村惠司共同委員長)は6日、都内で会合を開催し、政府から、4月に成立した「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下、特措法)の内容を聞き、意見交換した。当日は、内閣官房新型インフルエンザ等対策室長の田河慶太内閣審議官のあいさつに続き、同対策室の杉本孝内閣参事官から説明があった。
杉本参事官は、「患者発生のピークを遅らせ、患者数のピークを下げることが世界共通のパンデミック戦略。それにより国民の生命および健康を保護し、国民生活・経済に及ぼす影響を最小とすることを目標としている。特措法は、そのための重要なツールのひとつ」と説明。そのうえで特措法では、「国・地方公共団体の行動計画作成、指定公共機関(自らの業務を通じて対策実施の責務を担う法人)の指定等といった『事前の体制整備』と、特定接種(プレパンデミックワクチンの接種)の実施、外出や催し物等の制限要請や特定物資の売り渡し要請といった『発生時の措置』を講ずるための法的基盤を整備した」と説明した。
新型インフルエンザ等発生時の流れについては、「厚生労働大臣の公表(WHOのフェーズ4の宣言と同時と見込まれる)を受け、政府対策本部を設置し、行動計画に基づいて基本的対処方針の策定、特定接種の実施等に着手する。さらに病原性が強いおそれのある場合には、緊急事態宣言を発し、外出自粛要請や住民への予防接種等の対策を講ずる」としたうえで、「来年春を目途に、指定公共機関の指定や特定接種の対象事業者の基準等を詰めていくことになる」との見通しを示した。
■ 意見交換
続いて行われた意見交換では、「新型インフルエンザ発生時における法令の弾力運用に関する検討の進捗状況はどのようになっているか」との質問に対し、「法令措置が必須のものについては特措法に盛り込んでいる。弾力運用で対応可能な法令は多岐に渡り、状況もさまざま考えられ、しかも病原性や感染拡大状況、社会の状況など、発生時の状況は一様ではないこと、さらには効率的な事業継続と労働者や事業遂行上の安全等とのバランス等を発生状況に考慮する必要があるため、あらかじめ規定することは難しいのではないか」との見解が示された。
また、「特定接種の対象者選定方法に関する検討はどのように進めていくのか」との質問に対しては、「対象者の基準は行動計画に盛り込まれることになり、国民に開かれた場で決めることになる。プレパンデミックワクチンがなければBCP(事業継続計画)を立てられないとの声もあるが、プレパンデミックワクチンだけに頼るのではなく、手洗い・咳エチケット等の基本的な感染拡大防止策を幾重にも行うことが重要である」といった考えが示された。
また、「緊急時には国からの物資売り渡し要請に応えられないケースも想定される。罰則規定の運用について慎重に対応してほしい」との意見に対しては、「罰則規定は慎重に運用すべきものであり、適切に運用していきたい。まずは経済界の皆さんと相談して、どのようにスムーズに必要な物流、物資を確保するかという事前の準備が重要」との回答がなされた。
最後に、「都道府県を跨いだ運行を行っている鉄道では、発生時には県を跨いだ対策を考える必要があるため、内閣官房が主導して地域横断的な対策を検討してほしい」との要望に対しては、「内閣官房も一緒に国土交通省とも連携して検討していきたい」との回答があった。
【経済政策本部】