ミドルマネジャー(40歳前後の管理職)をめぐっては、業務の増大によりプレイング・マネジャー化を余儀なくされるなかで、本来の役割である職場全体の管理や部下指導・育成が疎かになっているとの指摘が、経営トップや人事担当者から多く聞かれる。職場の司令塔であるミドルマネジャーが、求められる役割を十分に果たせないことは、企業の競争力低下を招きかねない重大な問題である。こうしたことから経団連は、ミドルマネジャーの現状課題を整理したうえで、その解決に向けた具体的な対応策と13社の企業事例を収めた報告書「ミドルマネジャーをめぐる現状課題と求められる対応」を取りまとめ、15日公表した。報告書の概要は次のとおり。
■ ミドルマネジャーの現状課題
ミドルマネジャーが求められる役割を十分に果たせていない理由としては、(1)経営環境の変化(2)組織構造の変化(3)雇用形態や働き方に対する意識の多様化(4)短期的な業績・結果志向の強まり(5)コンプライアンス等に関する管理実務の増大――の五つの構造的要因が大きく影響していると考えられる。そのため、課題解決をミドルマネジャー本人の問題として突き放すのではなく、企業が組織として適切な対策を講じる必要がある。具体的には、(1)業務負荷の軽減に向けた組織的な取り組みの推進(2)OJT(仕事を通じた部下指導・育成)への制度的支援の実施(3)効果的なOff-JT(仕事から離れた企業内研修)への見直し――に加え、ミドルマネジャーのやる気や意欲を高めるような精神的な支援が求められる(図表参照)。
■ 具体的な対応策
(1)業務負荷の軽減に向けた取り組み
チェックシートを活用した業務の見える化や業務の優先順位付け、仕事の進め方のルール設定などといった「業務そのもの」と「働き方」の抜本的な見直しにより、組織的に効率的な業務遂行を推進していく必要がある。
(2)OJTへの制度的支援の実施
時間的余裕の不足とOJTに関する能力・経験不足への対応として、職場全体で新入社員や若手社員の育成に取り組むための体制整備、部下とのコミュニケーション力向上に向けた研修プログラムの導入、メンター制度などにより管理職登用前に部下を指導・育成する経験を意図的に積ませるといった取り組みが有効である。
(3)効果的なOff-JTへの見直し
アクションラーニングや内省のプロセスを重視した研修の導入により職場で実践しやすい内容に変更したり、研修の事前準備と研修後のフォローアップを充実することで研修の効果を高めたりすることが望まれる。また、e-ラーニングの活用や開催時期を複数回設定することにより、受講者の負担軽減を図っていくことが重要となる。
■ ミドルマネジャーに求められる五つの心得
企業の取り組み効果を一層高めるためには、ミドルマネジャー自身の努力も不可欠である。ミドルマネジャーには、(1)直面する課題はチームで解決し、一人で悩みを抱え込まない(2)信頼をベースとした人間関係を構築する(3)チームの方向性の明示と仕事の意味付けをする(4)部下の成長に合った指導・支援をする(5)自分のマネジメントスタイルについて常に内省する――の五つを日ごろから取り組むべき心得として認識し、行動していくことが求められる。
【労働政策本部】