経団連の日本ロシア経済委員会(岡素之委員長)は4月27日、東京・大手町の経団連会館で、訪日したヴェクセリベルク・スコルコヴォ基金総裁との懇談会を開催し、総裁から同基金の現状と展望、日本企業への期待等について話を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
優先5分野におけるロシア経済近代化を推進
スコルコヴォ計画はロシア政府肝いりの国家プロジェクトである。テクノロジーとイノベーションを企業家精神と結び付け、ロシア経済の成長と多様化を達成するための環境整備を行う。同計画の究極の目標は、ロシアが計画経済時代から蓄積してきた高水準の教育や強固な科学技術基盤をロシア経済近代化の優先5分野(エネルギー、IT、バイオ医療、宇宙、原子力)に活用し、ロシア内外の企業、大学、研究者等と協力して世界的な技術を有する企業を育成することである。
そのために、「スコルコヴォ・エコシステム」を構築する。これは、新科学技術大学とイノベーションセンターの創設、それらを支えるスコルコヴォ・シティーの整備からなる。新科学技術大学では、修士課程と博士課程で1200名が優先5分野に関する研究を行い、イノベーションセンターにはテクノパークが建設され、進出した世界的な企業パートナーが研究開発を実施する。スコルコヴォ・シティーはこうした活動を支え、研究者が快適に住み働くことを可能にする環境配慮型の高度な都市インフラである。
数々の優遇措置を提供
スコルコヴォ基金は非営利組織であり、進出企業に融資等の資金援助を要請するものではないことを強調したい。われわれは、発展の初期段階にある進出企業に対して無償資金(グラント)を供与したり、ロシア内外の技術を活用したりするために、企業、大学、研究者等を仲介するなど強力なロビイストとして活動を支援する。なお、開発が完了した科学技術を活用し、大規模な商業生産に移行する段階では、ロスナノ社等が支援する。
スコルコヴォに進出した企業は10年間、法人税と付加価値税が免除され、社会保障費は70%減額される。研究用資機材の輸入税減免措置もある。また、各種手続きをワンストップショップで完了できるなど、進出企業が技術開発やプロジェクトの実現に専心できる環境を整えている。
日本企業の進出を歓迎
2010年の設立以来約2年で、すでにロシア内外の427社がスコルコヴォに登録し優遇策の恩恵を得ているほか、100社が無償資金を獲得している。また、31社に対しベンチャーキャピタルへの橋渡しを行い、多額の出資を得るなど着実に実績をあげている。しかしながら、技術とイノベーションのリーダーたる日本企業の参加は極端に少ない。
プーチン新大統領は、イノベーションによるロシア経済近代化を継続して推進しようとしている。また、ロシアはWTO加盟によって技術の標準化に取り組もうとしている。
そうしたなか、われわれは、慎重な日本企業が抱くロシアビジネスへの印象を変えたい。そして、幅広い分野で互恵的なパートナーシップを構築するために、日本企業のテクノロジーハブとなり、イノベーションを推進する基盤として機能したい。多くの日本企業がスコルコヴォ計画に参画することを大いに期待している。
【国際経済本部】