経団連は4月25日、東京・大手町の経団連会館で、都市・地域政策委員会(岩沙弘道委員長、山口昌紀共同委員長)と住宅政策委員会(宗岡正二委員長、関口憲一共同委員長)の合同会合を開催した。来賓の秋山弘子・東京大学高齢社会総合研究機構特任教授から、「長寿社会のまちづくり」と題して、高齢社会に対応した住まい・まちのあり方に関する課題や対応策について説明を聞いた。
概要は次のとおり。
■ 社会インフラ整備の必要性
世界の最長寿国である日本では、1950年から平均寿命が約30年伸びるという「寿命革命」が起き、高齢化率も5%から23%に激増した。そのために人生の第4期となる75歳以上の後期高齢者が増えているが、現時点では後期高齢者の認知能力や味覚の変化を含めた科学的な解析が不十分である。今後はデータに基づいた政策やものづくり、サービスが必要となる。今の社会インフラは若い人が多くて高齢者が少ないピラミッド型の人口構成を前提にしており、2030年に全人口の2割を後期高齢者が占めると対応ができなくなる。特に、都市部での高齢化問題が深刻となる。
一方、医学的には高齢者が健康で長生きするようになったとのデータがある。65歳の男性では約20年、女性では約25年の平均余命があり、その約9割は自立して生活できる期間である。多様な人生設計が可能になるため、住宅やまちで新しい生き方を提案するような視点も重要となる。生活自立度の変化には男女差があるが、長寿社会に向けての対策としては、(1)自立期間の延長(2)自立度が落ちても安心して快適に生活できる環境の整備(3)社会とのつながりを持つための仕組みづくり――が必要である。
■ 社会実験
東京大学では千葉県柏市および福井市と連携して、長寿社会のまちづくりに関する社会実験を進めており、住宅、医療、介護、福祉、移動手段、人のつながり、就労といった課題に応じてプロジェクトを実施している。柏市ではUR都市機構(都市再生機構)が豊四季台団地を建て替えるのにあわせて、バリアフリー化やコミュニティー活動の充実を図り、健康寿命の延伸を目指している。就労に関しては、もともと東京に通勤していた高齢者の知識や経験を活用しつつ、地元とのつながりを持ち、フレキシブルな働き方や採算性が確保できる七つの事業を立ち上げている。また、産学連携により、高齢者の安全性と生産性を確保するための技術開発やICTを活用したデータの蓄積等の研究を58社の加盟企業とともに進めている。
【産業政策本部】