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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年5月17日 No.3085 提言「高齢社会に対応した住まい・まちのあり方」公表 -あるべき姿実現へ方策提示

経団連は15日、提言「高齢社会に対応した住まい・まちのあり方」を取りまとめ、公表した。国民が生涯にわたって安心して快適な生活を送るためには、今後の急速な高齢者増を見据え、ソフト・ハード両面にわたり、一貫した方針に基づいた官民での実効ある高齢社会対応が急務である。そこで、高齢社会の現状を分析したうえで、分野ごとに個別の課題を抽出し、全体に共通する論点を示すことで、あるべき姿の実現に向けた方策を提言した。

■ 変わる高齢者像

平均寿命の伸びや高齢者単身あるいは夫婦のみの世帯の増加、健康状態や就労の有無に応じた個人的差異の拡大を背景に、従来とは高齢者のとらえ方を見直す時期に来ている。実際には高齢者の8割以上が健常者であることから、健常高齢者を含めた社会全体で高齢弱者を支える必要がある。

一方で、高齢者関連の産業は裾野が広く、成長が見込まれることから、企業も社会貢献の域を越えて本格参入を図る段階にある。ただし、高齢者人口の増加は今後20~30年でピークを迎えるため、持続可能性の確保が必要である。

■ 高齢社会のあるべき姿

住まいについては加齢とともに身体状態に応じてニーズが多様化している。自宅のバリアフリー化を進めつつも、必要に応じて適切な住まいへの円滑な住み替えを後押しする必要がある。住み替え先として、施設系と住宅系のバランスの取れた整備を図り、利用者にわかりやすい選択肢を提示するとともに、在宅サービスの拡充も重要となる。

まちづくりでは、まず、まち全体のバリアフリー化とコンパクト化の推進が不可欠となる。住民の高齢化が進む郊外住宅地では、自然環境や治安の良さ、教育レベルといったまちの多面的価値を活用することで、地域内の世代交代を円滑化したり、高齢者コミュニティーとして再生したりすることにより、持続的なまちづくりの実現が期待される。その際、まちの価値を高めるためにエリアマネジメントの促進も欠かせない。

サービスについては、ニーズに応じたさまざまなサービスをシームレスかつワンストップで受けられるよう、地域のなかで他業種連携の中心的役割を果たす主体が必要である。個別には、介護・医療、流通・小売、交通、金融の分野ごとに課題克服が求められる。

■ あるべき姿の実現に向けた官民の役割

課題克服に向けては、まず、国が高齢社会対応の軸足を定め、国民全体で共有したグランドデザインのもとで、省庁間、中央と地方、自治体間で分断されることのない安定した制度を構築・運営することが重要である。そのグランドデザインに基づいて、地元に密着した地方自治体が地域における高齢社会対応の全体像を描き、官民の垣根を越えて多様な主体を効率的につなぐ役割を果たすべきである。そして、財政難のもとで持続可能な高齢社会対応を実現するためには、基本的に公的部門は低所得層向けのセーフティーネットの整備に専念し、支援策や規制緩和を通じて民間の力を最大限に活用する方向を目指すという官民の適切な役割分担が不可欠である。

【産業政策本部】

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