経団連は7日、東京・大手町の経団連会館で「地方分権改革シンポジウム-国出先機関の移管実現と地域の自立」を開催した。わが国経済の再生に資する地方分権改革を進めるためには、国出先機関の地方への移管の実現が不可欠との認識から、政府に、関連法案の早期かつ着実な成立を促すのがねらい。関西広域連合、九州地方知事会、関西経済連合会、九州経済連合会、経済同友会と共催、経済広報センターが後援し、企業、関係省庁、地方自治体、地方議会などから約400名が参加した。
開会あいさつで畔柳信雄副会長は、「各地域が成長戦略につぎ込む原資を生み出せるよう、地方分権、行財政改革を断行することが重要。国出先機関の移管が地方分権の改革の突破口となることを期待する」と述べた。
続いて前総務大臣の片山善博慶應義塾大学教授が基調講演。国出先機関の地方への移管が重要としたうえで、政治のリーダーシップにより官僚や業界の反対を抑える一方、地方自治体は説明責任を果たし、住民の信頼獲得に向けた努力により改革を推進することが欠かせないと主張した。
その後、片山教授をコーディネーターに、神野直彦東京大学名誉教授、井戸敏三関西広域連合長(兵庫県知事)、嘉田由紀子同国出先機関対策委員長(滋賀県知事)、古川康佐賀県知事、村上仁志関西経済連合会地方分権委員長、松尾新吾九州経済連合会会長によるパネルディスカッションが行われた。
神野氏は、各国とも、経済のグローバル化に対抗し得る地域経済の構築に向けて、地方分権を進めていると指摘。こうしたなか、地域主権戦略会議が決定した国出先機関改革の基本構成案は、機関委任事務復活への懸念が残るが、まずは取り組みを進め、よい点を他地域につなげられるよう今後の動向を注視する必要があるとした。
井戸氏は、国の出先機関の事務を引き受けることが関西広域連合の存在意義であり、移管事務を仕分けていては進まないことから、「丸ごと」移管を主張していると説明。出先機関を移管し、住民に近いところでサービスを提供することで、説明責任を果たし、透明性を上げていく必要があるとした。
嘉田氏は、道路予算にしてもどう決まるのかわかりにくいなど、出先機関に対する住民ガバナンスが欠如しており、地方の現場の声が届いていないとの問題点を指摘。国出先機関の地方への移管の必要性を強調した。
古川氏は、九州は一体感を持った地域であり、行政と経済界がともに観光開発や道州制の推進に取り組んできた実績を強調。地域住民が身近に感じられるレベルで物事を決め、責任を取っていく姿が望ましいとした。
村上氏は、関西において、大都市を中核とした広域の経済圏をつくり、競争力を強化することが日本再生のエンジンになると指摘。そのためには行政も広域化して、コーディネーター機能を一元的に担う必要があるとした。
松尾氏は、外交、国防など国が国の果たすべき役割に集中するためにも、地方分権を進める必要があると指摘。九州広域行政機構や関西広域連合の取り組みを進め、道州制につなげるべきと訴えた。
閉会あいさつでは、関経連の松本正義副会長が、「自治体、経済界をはじめとする各界各層からの改革を求める声が、全国に広がっていくことが必要」と改革実現に向けた決意を示し、締めくくった。
【産業政策本部】