経団連は15日、提言「成長戦略の実行と財政再建の断行を求める-現下の危機からの脱却を目指して」を取りまとめ、公表した。提言の概要は次のとおり。
■ 経済・財政の現状への強い危機感
わが国は本格的な人口減少社会に直面するなか、社会保障と税の一体改革や、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加をはじめとする経済連携の遅れなど、経済・社会の変化に十分対応しきれていない。また、長引く円高・デフレからの脱却や、財政健全化への道筋も展望できておらず、現状を放置すれば、産業の空洞化が進行し、世界における日本の存在感は確実に低下する。こうした強い危機感から、政府に対し、これまで経団連が訴えてきた成長促進型施策の迅速かつ着実な実施と、財政再建への取り組みの強化を訴えた。
■ 成長促進型施策の総動員
経団連、政府が目標を共有する「実質2%、名目3%を上回る経済成長」へ向けた具体的な施策として、(1)復興特区を活用した震災からの早期復旧・復興(2)法人実効税率の25%までの引き下げをはじめとする国際的な事業環境のイコールフッティングの実現(3)政府研究開発投資や研究開発促進税制の拡充等のイノベーション推進策の実現(4)農業、医療・介護、都市・まちづくり分野における大胆な規制改革を通じた国内需要の発掘(5)TPPをはじめとする経済連携の推進、パッケージ型インフラ輸出の拡大、観光振興等による海外需要の取り込み――を掲げた。
■ 社会保障給付の抑制と主な歳出項目への上限設定
財政再建の方策としては、(1)社会保障各分野(医療・介護、子育て、年金)での効率化・重点化を通じた給付抑制と、消費税を含む安定財源確保を柱とする社会保障と税の一体改革の推進(2)主要政策分野ごとの歳出上限の設定による新たな歳出抑制プログラムの導入――を提案した。
さらに、これら諸施策の実現に向けて、改革のタイムスケジュールの明確化、政府の明確なコミットメント、徹底した進捗管理の必要性を強調した。
■ 政策の総動員で持続的成長と財政再建を達成
前記の政策提言の効果を定量的に示すため、経団連のマクロモデルによる試算結果を提示した。これらの政策をすべてパッケージとして実行に移す改革推進ケースでは、10年後に実質2%、名目3%の成長が達成できるとともに、公債等残高(対GDP比)は、2020年代半ばに約250%で増加に歯止めがかかるとの結果を得た。
■ 求められる政治決断
提言末尾では、当面の焦点となる消費税法改正法案の早期成立を実現すべきことや、日本再生戦略の取りまとめにあたっては、新成長戦略の実行を核とすべきことを主張し、野田内閣の決断と実行への期待を表明した。
【経済政策本部】