経団連は3月19日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会合同会合を西村知典宇宙利用部会長の司会で開催した。当日は、山形俊男・東京大学大学院理学系研究科長・理学部長から宇宙と海洋の連携について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
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政府の宇宙基本計画と海洋基本計画の連携を推進すべきである。両計画は、開発利用と環境保全の調和、産業の育成、安全保障、国際的協調などの点で関係している。
衛星利用によって、海上だけでなく海中の状態もわかり、そこから新たな産業を興すことができる。宇宙航空研究開発機構(JAXA)などは衛星を用いて海面水温、海色、海面高度、塩分濃度などを測定し、気象庁や海上保安庁などの機関は船舶やブイで海上のデータを収集し、海上気象を観測する。
これらのデータを組み合わせることで、漁場などを予測し漁業者に提供する水産支援サービスや、津波や高潮などの予測・通報をする沿岸防災サービスを提供できると考えられる。
衛星の合成開口レーダー(注)により海の表面と海面高度の2つのデータを取り、それに海洋のデータを連携させて海の変動を予測できる。例えば、2カ月後の海面と水深200メートルの水温や海流の予測が可能となる。2004年6月には同年8月の黒潮蛇行の予測をし、的中した。
海流予測情報は、天気予報、海洋汚染、漁業、海運、海洋資源や再生可能エネルギーの開発などの事業に展開できる。原油タンカーが流れの速い場所を運航することで、消費燃料とCO2排出量の9%削減が実証された。昨年は、福島から太平洋への放射性核種の拡散を予測し、これは海洋科学面で貴重なデータとなった。また、高解像度の海洋予測も行っている。海洋レーダー観測と海流予測のデータを組み合わせることにより、完全な海洋管理ができるようになる。
現在、エルニーニョ現象は2年前から予測できる。大気と海洋を結合させたモデルで、エルニーニョ現象を再現できるほか、南アフリカやオーストラリアのラニーニャ現象を予測している。宇宙と海洋の連携により、異常気象への備えや防災・減災、農業などの産業活動に役立つ高度な気候予測が可能になっている。
(注)合成開口レーダー=マイクロ波を照射し、反射波を測定することによって地表面の起伏、凸凹、傾斜などを観測する電波センサー
【産業技術本部】