第2回フォローアップには、昨年の28業種から新たに3業種(日本ベアリング工業会、日本乳製品協会、全国清涼飲料工業会)が加わり、合計31業種 #1 が参加した。31業種からのCO2排出量は、1990年度で 1.29億t-C #2 であり、これは、1990年度のわが国全体のCO2排出量 3.067億t-Cの約42%に相当する。また、これら31業種の排出量は、わが国の産業部門およびエネルギー転換部門全体の排出量(90年度、1.71億トン #3 )の約75%を占めている。
経団連は、「2010年に産業部門およびエネルギー転換部門からのCO2排出量を1990年以下に抑制するよう努力する」という目標を掲げ、各業種、企業とも、この達成に向けて努力している。第2回フォローアップの結果、今回の対象年度である1998年度のCO2の排出量は1.26億t-Cとなり、1990年度比で 2.4%減少、1997年度比で 6.0%減少したことが明らかになった。
この他、今回のフォローアップでは、2005年度のCO2排出量は 1.34億t-C(1990年度比約4%増)、対策を実施しない場合の2010年度の排出量は 1.42億t-C(1990年度比約10%増)と見込まれる。
(単位:t-C) | ||||||||||||
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98年度において産業部門およびエネルギー転換部門からのCO2排出量が減少した理由としては、素材産業等での生産量が減少したことや、各業種・企業がCO2排出原単位やエネルギー原単位の向上に努めた結果であると言える。
98年度は景気動向の影響を受け90年度レベルを下回ったが、前述の通り対策を実施した場合の2005年度のCO2排出量は90年度比で約4%増加すると見込まれており、産業界は当初の目標に向けて継続的に努力していく必要がある。
産業およびエネルギー転換部門の31業種のうち、CO2排出量が90年度比で減少した業種は20業種、97年度比で減少した業種は27業種(この他横ばい2、増加2)にのぼる。また、CO2排出原単位あるいはエネルギー原単位を目標あるいは見通しとして示した24業種のうち、90年度比で原単位が向上した業種は17業種、そのうち97年度比でも向上した業種は10業種存在する(別紙1、別紙2参照)。
わが国の98年度のCO2の総排出量は90年度比で大きく増加しているとの試算がある #5。このような中で、景気動向の要因も影響しているとは言え、今回のフォローアップにおいて産業界全体(産業部門・エネルギー転換部門)の98年度のCO2排出量が90年度比で 2.4%減との結果がでたことは評価に値すると考える。しかしながら、対策を講じた場合にも2005年度頃までは年度によって多少の増減はあっても全体としては増加の傾向にあると予想されることから判る通り、CO2排出量の今後の動向は楽観できない。従って、経団連としては、今後とも各業界が自ら掲げた目標の達成に向け対策を着実に実施していくことを求め、「2010年に産業部門およびエネルギー転換部門からのCO2排出量を1990年以下に抑制するよう努力する」という目標を達成していくこととする。
なお、産業部門からの排出量が減少傾向にある一方、全体としての排出量が増加していることから、民生・運輸部門の取組みにおける意識の向上、取組み推進に向けた政策が必要であると指摘できる。産業界としては、引続きCO2の排出の少ない製品・サービスの開発を通じて民生・運輸部門での排出抑制に寄与していく方針である。
- 産業部門およびエネルギー転換部門の31業種は、電気事業連合会、日本ガス協会、石油連盟、日本鉄鋼連盟、日本化学工業協会、セメント協会、日本製紙連合会、住宅生産団体連合会、日本電子機械工業会、日本自動車部品工業会、日本自動車工業会、日本建設業団体連合会、日本鉱業協会、日本電機工業会、板硝子協会、日本ゴム工業会、日本電線工業会、日本アルミニウム連盟、日本製薬団体連合会、ビール酒造組合、日本伸銅協会、石炭エネルギーセンター、精糖工業会、石灰石鉱業協会、日本写真機工業会、日本造船工業会、日本鉄道車両工業会、日本産業機械工業会、日本ベアリング工業会、日本乳製品協会、全国清涼飲料工業会。
- 産業界全体の排出量の算出にあたっての電力原単位は、下記の電事連出所データを利用している。また、個別業種(個別業種版に掲載)が使用している電力原単位についても特に説明のない限り、下記のデータを利用している。
〔90年度:0.102、97年度:0.089、98年度:0.087、2005年度:0.097、2010年度:0.082(kg-C/kWh)〕
その他の各種エネルギーの変換係数は原則的に総合エネルギー統計(発熱量)および環境庁「二酸化炭素排出量調査報告書(92年)」(炭素換算係数)のデータを利用。- 環境庁発表のわが国のCO2排出量の内、エネルギー転換部門、産業部門、工業プロセスの合計である。
- CO2排出量の実績値や見通しについては、数字の精度を高めるために毎年見直しを行なっていることから、昨年の結果と比較して、多少の増減が生じることがある。
- (財)地球環境戦略研究機関の試算では、日本の98年度のCO2排出総量は前年度から3.0%減少したが、90年度比では6.2%増加したと見込んでいる。