経団連では、『大規模小売店舗立地法第4条の指針に関する答申案に対する意見』(1999年5月20日)において、関連政省令等の策定にあたっては、出店者の負担軽減のみならず行政改革・規制緩和の観点からも、届出書類等の簡素合理化とともに、届出を要しない範囲を極力緩やかなものとするよう求めたところである。また、『大規模小売店舗立地法第4条の指針(案)の策定にあたって』(1999年6月23日付通産省公報)においても、「届出書類等は出店者に過重な負担とならぬよう必要最小限のものとすべきであり、また、頻繁な変更届出を強いることがないよう、いわゆる「軽微変更」として変更届出を要しない範囲を各種対応策に照らして合理的に設定することが必要である」旨指摘されている。通産省においては、今回意見募集が行なわれている大店立地法施行規則の一部を改正する省令案についても、以下の諸点を含め、引き続き関係者の意見を十分に取り入れ、上記趣旨が徹底されるよう要望したい。
大規模小売店舗立地法は、「大規模小売店舗の立地に関し、その周辺の地域の生活環境の保持のため、大規模小売店舗を設置する者によりその施設の配置及び運営方法について適正な配慮がなされること」を目的とし、そのため、法第4条の指針においては、設置者等に対して駐車場の確保、荷捌き施設の整備、騒音問題への対応等の細かな配慮を求めている。
その具体的内容として、例えば第三条第二項では、開閉店時刻(第一号)、駐車場や荷さばき施設の使用時間帯(第二号、第四号)が、届出事項とされているが、これらについては第四条の届出の添付書類とし、説明会で説明すれば十分と考える。
特に、店舗の開閉店時刻(第一号)については、地方公共団体の実際の運用において需給調整的に使われる惧れがあり、第三条第二項からの同号の削除を強く要望する。
届出等の添付書類については、各種許認可等の手続きの中でも往々にして届出者等の大きな負担となる場合が多く、冒頭でも指摘した通り、必要最小限のものとすべきであり、同時に、実態に十分に即したものとする必要がある。
例えば、遮音壁(第八号関係)については店舗が住宅地に近接している場合の対応策として法第4条の指針において例示されているものであり、特に郊外型店舗には必要とされない場合が多い。法第五条第二項では「前項の規定による届出には、通商産業省令で定める事項を記載した書類を添付しなければならない」とされており、場合によっては遮音壁の設置が義務化されたかのような印象を与える惧れがある。従って、「遮音壁を設ける場合には」を条文に加え、無用な誤解が生じないようにすべきである。
同様に、冷暖房設備の室外機(第九号関係)等については冷蔵・冷凍設備を要する食品の店舗内での配置の影響を受ける場合が多いが、販売品目の配置については市場環境等の変化に適宜適切に対応する必要がある。来客の自動車を案内する経路(第六号関係)についても、周辺の道路事情等の変化に機敏に対応することが周辺環境への影響を少なくするものと考えられる。これらについては出店者の柔軟な対応を妨げることのないよう、条文中に「〜の概略」等を加えることを要望する。
変更届出が不要とされる「変更が一時的なもの」とは、当該届出に係わる事項(店舗面積の合計、施設の配置・運営方法等)の恒常的な変更以外のものとし、その旨を地方公共団体に徹底すべきである。なお、通産省において「一時的な変更」の基準作りを行う場合には、上記の基本的な考えや関係者の意見等を十分に踏まえ、その基準が決して限定的なものとならないようすべきである。
省令案では店舗面積以外の店舗の施設(駐車場、駐輪場、荷捌き施設、廃棄物の保管施設)の恒常的な変更については、容量の増加につながるもの以外は全て変更届出の対象とされ、かつ届出後8ヶ月経過した後でなければ変更を行ってはならないとされている。しかし、容量の減少につながるものでも、周辺環境へ過度の影響を及ぼさない一定限度内の変更であれば、これを届出不要とすべきである。具体的には、一定限度内の「駐車場又は駐輪場の収容台数を減少させるもの」(第四号関係)、「荷さばき施設の面積を減少させるもの」(第五号関係)、「廃棄物等の保管施設の容量を減少させるもの」(第六号関係)を追加すべきである。また、「大規模小売店舗において小売業を行う者の開店時刻の繰下げ又は閉店時刻の繰上げを行うもの」(第七号)については、上記1で指摘した、店舗の開閉店時刻そのものを第三条第二項の届出事項から削除することに併せて削除すべきである。
なお、省令案では「省令で定める変更は、次の各号に掲げるもののいずれかのみを内容とする」とあるが、各号に掲げる事項であれば複数号に該当する変更(例えば店舗面積の増加と駐車場の収容台数の増加等)であっても問題はないと考える。地方公共団体の実際の運用において誤解が生じないよう、その旨を徹底すべきである。
8ヶ月間の不作為義務を課されない「軽微な変更」については、「店舗に附属する施設の位置の変更」に限定されているが、本件については、当該届出に係わる法第五条第一項第三号から第五号までに掲げる事項の変更を対象とすべきであり、影響の程度についても、「大きく変化がないと都道府県が認めるもの」とすべきである。
なお、地方公共団体の運用において、ある程度の全国的統一性を確保するために通産省において何らかの基準作りを行う際には、上記の基本的な考えや関係者の意見等を十分に踏まえ、その基準が決して限定的なものとならないようにすべきである。
上記1でも指摘したように、大規模小売店舗立地法は、「周辺の地域の生活環境の保持のため、大規模小売店舗を設置する者によりその施設の配置及び運営方法について適正な配慮がなされること」を目的としており、その内容を周辺住民等へ説明することは重要である。しかしながら、その負担は「合理的な水準」の範囲内であるべきであり、その意味で、最大3回の説明会開催としたことについては評価できる。しかし、説明会を開催する必要がないと都道府県が認める場合には、「説明会開催者は、当該大規模小売店舗の立地する敷地内の見やすい場所に、届出事項及び添付書類の要旨を掲示することで足りるものとする」とされている点については、届出書類や添付書類は既に縦覧されており、都道府県がその旨を公告する(あるいは縦覧場所にその旨掲示する)ことで十分ではないかと考える。
また、説明会の開催を公告する手段として、都道府県の公報又は広報紙に掲載することが挙げられているが、公報や広報紙の締め切り等の事情により本紙に掲載できない場合も考えられるため、公報又は広報紙に案内等を折り込む方法、あるいは、現行大店法での説明会の案内の際に通常行われているような日刊紙への折り込み広告による方法も認めるべきである。