[経団連] [意見書]

大規模小売店舗立地法第4条の指針に関する答申案に対する意見

1999年5月20日
(社)経済団体連合会

経団連では、平成10年4月に『流通分野における一層の規制緩和を要望する』(以下『平成10年4月要望』)をとりまとめ、「経済的規制の象徴ともなってきた大店法の廃止は、規制緩和の進展を内外に示すものであり、わが国の行政改革の歴史の中でも特記すべき第一歩となろう」と、今般の大型店を巡る政策転換を評価した。その上で、大店立地法等新制度についての基本的な考えを明らかにし、特に今回意見募集が行なわれている大店立地法第4条の指針については、「数値等により客観的かつ分かりやすいものとするとともに、通常、広域展開を前提とする大規模小売業の特性に鑑み、地方公共団体間の取り扱いに過度に差が生じることのないよう裁量の幅を極力限定したものとすべき」ことを指摘した。

今回、明らかにされた『大規模小売店舗立地法第4条の指針(案)の策定にあたって』(以下『策定にあたって』)では、本指針は、ナショナル・スタンダードとして、「大型店の設置者が法的に配慮すべき事項の範囲を画するものである」ことが確認され、また、『大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき事項に関する指針(案)』(以下『指針(案)』)では、大型店側が配慮すべき事項に関し、駐車場の必要台数等をはじめ数値・数式等により客観的に示されたことは基本的には評価できる。ついては、「指針(案)」に示されている交通・騒音・廃棄物対策等の個別具体的な数値・数式等については、その是非も含め、引き続き関係者の意見を十分に取り入れ、実態に即し、かつ経済的に許容可能なものとなるよう配慮されたい。また、その実際の運用等においては、特に、『指針(案)』で指摘している通り、「既存類似店のデータなどその根拠を明確に示して他の方法で算出することができる」旨を徹底すること、ならびに、以下の諸点が十分に考慮されるよう要望する。また、大店立地法の政省令等についても、新制度への円滑な移行のためにも早急に案を策定・公表し、意見募集を行うことを要望したい。

  1. 大店立地法の制定趣旨の徹底
  2. 『策定にあたって』では、「大型店の出店による既存中小商業者への商業上の影響を理由に大型店の出店を調整するという考え方は大規模小売店舗立地法の趣旨に反するものであり、かかる観点は指針のみならず運用においても排除されるべきものである。(中略)かかる趣旨は地方公共団体においても徹底されることが重要であり、現行大店法のような商業調整を目的とする条例・要綱は、今般の政策転換の趣旨に明らかに反するものであって認められない」ことが強調されると同時に、大店立地法の運用においても「大型店の設置者の負担を増大させるような規定(いわゆる「上乗せ規制」)を置くことができない旨自治体への十分に周知徹底を図ることが必要である」と指摘している。
    ついては、経団連が『平成10年4月要望』において指摘した「新制度が形を変えた大店法とならないように」との懸念が払拭されるよう、地方における商業調整を目的とする条例・要綱が早急に一掃されるとともに、新法の運用においても、いわゆる「上乗せ規制」的な規制が横行しないよう、あらゆる手段が講じられることを要望する。とりわけ、通産省においては、新制度の適正運用と苦情受け付け等を行う専用の窓口を省内に設けるとともに、必要に応じて、地方自治体に対して地方自治法に基づく助言・勧告をはじめ適切な措置を積極的に講じることを求めたい。

  3. 大型店の設置者・出店者の負担のあり方
  4. 経団連は『平成10年4月要望』において、大型店側の責務として、「出店が地域の生活環境に及ぼす影響が注目されている事実を重く受け止め、従前に増して交通渋滞・交通安全、駐車・駐輪問題、騒音、廃棄物等の対策に積極的に取り組む必要がある」旨指摘した。生活・地域密着型の企業の社会的責任として、上記については引き続き重要性を確認したい。
    とはいえ、『策定にあたって』で指摘する通り、大型店側に「経済合理性を無視した対応を無原則に求めるものでは」あってはならず、「指針で法的に求めうる負担の水準は社会的にみて合理的とみなされるものでなければならない」。例えば「インフラの整備などは一義的には公共部門が対応すベき問題であり」、これまで指摘の多い信号機の設置や道路の拡幅等、過度に出店者側に負担を求めることはあってはならない
    なお、『策定にあたって』で指摘する通り、大型店側の負担という観点からは、手続き負担の軽減は重要である。届け出書類等の簡素合理化はもとより、「軽微変更」の範囲については、行政改革、規制緩和の観点からも極力緩やかなものとすべきである。

  5. 地方公共団体の運用、関係法令の同時並行処理について
  6. 大型店の出店には大店立地法のみならず都市計画法、建築基準法等の建設関係から食品衛生法や薬事法等の営業関係等の多くの法令が関係する。従って、『策定にあたって』でも指摘する通り、「縦割り行政」の弊害が顕在化しないよう国・地方を通じて、関係行政庁間、関係内部部局間の連絡・調整が円滑に行われることが必要である。とりわけ、大店立地法への移行に伴って出店空白期間を生じさせないためにも、特に、都市計画法の開発許可、建築基準法の建築確認が大店立地法の手続きと並行して、場合によっては先行して行われることが求められ、関係省庁等の連携について通産省の主導的な役割を期待したい。

  7. 法令を含めた早期の見直し
  8. 平成11年3月30日に改定計画が閣議決定された『規制緩和推進3か年計画』では、「経済的規制は原則自由、社会的規制は必要最小限」との原則を改めて確認するとともに、規制の新設の際には「原則として当該規制を一定期間経過後に廃止を含め見直すこととする」旨指摘している。『策定にあたって』では、本指針についても「施行後遅くとも5年以内に見直しを行うことを予定することが適当」とされているが、経団連としては、社会経済情勢の変化に対応した規制の見直しを行う観点から、3年後程度を目処に見直しが行われることを求めるとともに、大店立地法、同施行令等についても、同様に見直しが行われることを併せて要望したい。

  9. 意見、勧告等の取り扱い
  10. 大店立地法では、都道府県は、大型店の新増設に係わる届出から八ヶ月以内に地域の生活環境の保持の見地から意見を述べるものとし、意見を有しない場合にはその旨を通知することとなっている。また、当該意見に対する変更の届け出又は変更しない旨の通知より二ヶ月以内に限り、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。ついては、大店立地法に係わる手続きを可能な限り短縮する観点から、これら意見や勧告については八ヶ月、二ヶ月の到来を待つことなく取りまとまり次第、随時、行なわれるよう求めたい。とりわけ大店立地法への移行に伴って出店空白期間を生じさせないためにも、同期間については、関係部局における迅速な対応を期待したい。
    なお、上記勧告は法律に規定されている通り、「大規模小売店舗の周辺の地域の生活環境に著しい悪影響を及ぼす事態の発生を回避することが困難である」場合で、「そのための必要な限度を超えないものであり、かつ、届け出をしたものの利益を不当に害するおそれがないものでなければならない」ことを徹底すべきである。もし、上記趣旨に反するような勧告が出され、それに従わなかったことだけを理由に「社会的制裁」を目的として、その旨を公表することは、経団連が『平成10年4月要望』で指摘した通り、行政手続法の趣旨を逸脱する恐れがあることを改めて指摘しておきたい。

以 上

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