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第1回経団連環境自主行動計画フォローアップ概要

1999年1月28日
(社)経済団体連合会

  1. はじめに
  2. 経団連では、1991年に「経団連地球環境憲章」を発表し、「環境問題への取り組みが企業の存在と活動に必須の要件である」ことを明確にし、環境保全にむけて自主的かつ積極的に取り組みを進めていくことを宣言した。1996年には「経団連環境アピール」をまとめ、地球温暖化対策や循環型経済社会の構築、環境管理システムの構築と環境監査、海外事業展開にあたっての環境配慮にむけて具体的な方針を宣言した。このような流れを受けて、1997年には、「経団連環境自主行動計画」を発表し、わが国産業界の全産業レベルにおいて環境対策を着実に実施していくための継続的な仕組みを創設した。その考え方は、環境対策の実施にあたり、明確な目標を掲げ、その目標達成に向け、毎年、フォローアップを行うことによってアカウンタビリティーを高め、「社会的公約としてのインセンティブ」を働かせ、自主的に最大限の努力を行うというものである。また、この行動計画の特徴の一つは41業種・142団体(97年は37業種138団体)#1という全産業レベルの取り組みである。このようにできるだけ幅広い参加を得た取り組みを行なっていくことにより、国民全体の動きにつなげたいと考えている。このような自主的な取り組みは、ドイツやオランダ、オーストラリアなどの産業界でも見られ、先進国を中心に大きな潮流となっている。
    まず温暖化対策については、経団連は97年に行動計画を策定した際に、「2010年に産業部門およびエネルギー転換部門からのCO2排出量を1990年レベル以下に抑えるよう努力する」旨の目標を掲げた。この自主行動計画の透明性をさらに高めるために、業界毎に行動計画およびフォローアップの状況を政府の産業構造審議会等の場に報告し、第3者的な立場からレビューを受けることになっている。さらに、政府が98年6月に策定した「地球温暖化対策推進大綱」においても経団連環境自主行動計画は対策の主要な柱の一つと位置づけられている。われわれ産業界としては、今後とも民間の自主性をいかしながら引き続き最大限の取り組みを進めていきたいと考えている。
    廃棄物対策については、経団連では、1990年より主要業界の廃棄物対策の状況を毎年調査し、公表してきたが、さらにその活動を進めるべく、97年に行動計画を策定するにあたって廃棄物対策もこれに統合することとなった。多くの業界で、リサイクル率、最終処分量などの目標を掲げるとともに、その達成のための方策を示している。

  3. 第1回フォローアップについて
  4. この自主行動計画フォローアップは、97年6月に自主行動計画を発表してからのほぼ1年間の対策の進捗状況をレビューするとともに、地球温暖化問題の京都議定書への対応などの新しい動きを含め、目標や対策などの取り組み内容を追加・更新したものである。#2
    このフォローアップは次の4点で構成される。

    (1) 第1回経団連環境自主行動計画フォローアップの概要
    温暖化対策を中心にフォローアップの全体の概要をまとめている。(本資料)
    (2) 第1回経団連環境自主行動計画フォローアップ結果(温暖化対策・個別業界版)
    温暖化対策について、業界毎のレビュー結果をまとめている。
    (3) 経団連環境自主行動計画(1998年版)
    温暖化対策、廃棄物対策、環境マネジメント、海外事業活動における環境配慮の4つの分野について、将来の目標と対策を中心にとりまとめた。
    (4) 第1回経団連環境自主行動計画フォローアップ資料(業界毎フォローアップ原本)
    各業界から経団連に提出された行動計画・フォローアップの原本である。資料として活用して頂きたい。
    (1)〜(3)は全て、(4)は一部、近くインターネットに掲載する予定である。

  5. 温暖化対策
    1. 参加業種・団体について
    2. フォローアップでは、この春から行動計画の主体となる業種ごとに個別会員企業にアンケート等を行い、97年度のエネルギーやCO2の排出量や排出原単位など、業界毎の対策の進捗状況について調査した。その結果を集計し、産業界全体のCO2排出量の合計#3(実績ならびに見通し)も発表している。今回、自主行動計画に参加している41業種の内、産業界全体の試算に含めたのは、産業部門およびエネルギー転換部門に属する28業種#4である。さらに、数値目標を定め97年度の排出量等の対策の現状を示している一部運輸・民生部門を含めた29業種については業界別のレビューをとりまとめた。(その他の民生・運輸部門の業界の取り組みは「経団連環境自主行動計画(98年版)」を参照)
      なお、行動計画に参加した産業部門・エネルギー転換部門のCO2排出量(1990年度)の日本のCO2総排出量(1990年度)に占める割合は、約42%と推計される。
      行動計画に参加した産業部門・エネルギー転換部門のCO2排出量(1990年度)の日本の産業部門・エネルギー転換部門全体からのCO2排出量#5(1990年度)に占める割合は約76%と推計される。

    3. フォローアップの主要結果
      1. 産業界全体(産業・エネルギー転換部門28業種)のCO2排出量(炭素換算)

        1990年度
        実績(トン)
        2010年度
        ビジネス・アズ・
        ユージュアル(トン)
        2010年度
        目標
        1997年度
        実績(トン)
        増減率
        (90年度比)
        産業+
        エネルギー転換
        1億2900万1億4300万
        (約10%増)
        1990年レベル
        以下にする
        1億3300万3.0%増

        経団連の目標は、「2010年に産業部門およびエネルギー転換部門からのCO2排出量を1990年レベル以下に抑制するよう努力する」というものである#6。しかしながら、今回の第1回フォローアップの対象年度である1997年度のCO2排出量は1.33億t-Cと、1990年度比3.0%の増加となっている。これは個別企業の省エネやエネルギー転換の努力にもかかわらず、生産量自体が増加していることが一つの理由になっていると考えられる。省エネルギー対策が進んでいるわが国においては、今以上の省エネルギー対策を推進するにはかなりの努力を要し、CO2を大量に除去する技術の確立や、CO2を発生しない又は発生の少ないプロセスへの転換も必要である。しかし、技術開発やプロセスの変更には、多くの時間と投資が必要となる。

      2. 業界毎のフォローアップ

        1. 行動計画の更新・追加等
          目標の新規・追加設定 17業種
          (石灰石鉱業、建設、住宅、乳製品、セメント、工作機械、造船、海運、不動産、ベアリング、清涼飲料、ガス、精糖、鉄鋼、自動車、ビール、運輸)
          CO2以外の温室効果ガス対策の追加 6業種
          (電力、化学、電子、自動車、電機、製薬)

        2. 業界別の実績と目標(見通し)
          別紙の表(業界別の実績と目標)にあるように、殆どの業界で目標とした指標(総量あるいは原単位)について、削減努力の効果が見られ、2010年の目標達成に向けて着実に歩みを進めていることがうかがわれる。
          個別業界の取り組みはCO2排出量やエネルギー使用量の削減を目標にしている場合と、CO2排出原単位(生産単位当たりのCO2排出量)やエネルギー原単位を指標としている場合がある。原単位は個別業界の省エネなどの努力により自らの改善することができる範囲である。総量は生産量の増減により大きく影響を受けるために、個別業界の努力だけではコントロールは難しい面があることに留意する必要がある。

      3. 結論
        1997年度は、産業部門およびエネルギー転換部門のCO2排出総量は、需要の拡大などにより1990年度実績に対し増加しているが、ビジネス・アズ・ユージュアルとの比較において、また、個別の業界の取り組みの内容に示されたように、原単位や総量など個々の業界が定めた目標に向けて削減傾向が見られるなど、産業界の自主的取り組みは着実に進んでいると言える。経団連としては、こうしたフォローアップの結果を踏まえて、昨年策定した目標が適切であるとの評価の下に、今後も2010年という目標年次に向けて、産業界全体の目標を達成すべく、各業界が自ら掲げた目標および対策を着実に実施していくこととしている。

    4. 地球温暖化対策の一層の推進に向けて
      1. フォローアップは継続的な取り組み
        この行動計画のフォローアップは、始まったばかりである。まだ改善すべき点もあると思われるが、参加各業界が長期的に温暖化対策を進めるべくあらゆる努力をしていると受け止めている。今回のフォローアップ結果を踏まえて、今後も産業界の自主的な対策が進展するよう、継続的にフォローアップを行なっていきたい。

      2. 政府、国民各層との協力が不可欠
        自主行動計画の目標の達成のためには、政府や国民の支援が必要である。温暖化対策も複雑化しており、一つの業界だけでは対応できなかったり、消費者等の協力が必要な部分もある。
        また、産業部門だけではなく、CO2の排出のほぼ半分を占める民生・運輸部門やこの自主行動計画に含まれない中小企業などにおける対策も極めて重要となっている。温暖化対策の推進は全ての国民が参加しなくては解決できない問題であり、国民の意識改革を含め、この面での有効な施策を早急に実施することが望まれる。

      3. 原子力発電の推進を
        特に温暖化対策で重要なのは、原子力発電の推進である。既に省エネ等が諸外国に比べ格段に進み、対策の選択肢が限定されているわが国においては、原子力発電による対策抜きでは、京都議定書で定められた目標を達成することは一層困難である。原子力につきまとう放射能への国民の不安や廃棄物対策への懸念などへ対処しながら、原子力発電に官民一体となって取り組むことが必要である。

      4. 国際的な柔軟性措置の活用を
        温暖化は地球規模の問題であり、その対策も日本に限らず世界各地で対策を行うことは有意義である。京都会議で認められた共同実施、クリーン開発メカニズムなどの国際的な柔軟性措置については、今後、産業界も自主的な取り組みを推進する中で自由に活用できるようにすることが望まれる。

  6. 廃棄物対策
    1. 概要
    2. 業界毎に、個々に97年に策定した行動計画で掲げた目標の達成に向け努力している。行動計画策定から1年以上が経過し、業界毎に、対策の進捗状況を調査するとともに、必要に応じて目標の追加・更新などを行なった。業界によって目標の設定方法や対策のあり方が大きく異なり、温暖化対策のような統一した目標は定めていない。廃棄物対策について明確な数値目標および対策を示しているのは28業種である。97年度の現状調査結果も掲載している業界も多い。概要は「経団連環境自主行動計画(1998年版)」およびフォローアップ資料をご覧頂きたい。

    3. 数値目標(重複あり)
    4. 廃棄物発生量(ガス、板ガラス、電線、百貨店)
      廃棄物処分量
      廃棄物処分量 (石油、鉄、化学、電子、自動車、鉱業、ゴム、製薬、精糖、乳製品、ベアリング、百貨店)
      産業廃棄物製品当たりの最終処分量(製紙)
      最終処分率(建設)
      最終処分委託率(電機)
      リサイクル
      再資源化率 (電力、ガス、鉄、化学、電子、建設、鉱業、住宅、電機、アルミ、ビール、伸銅、石炭、精糖、産業機械、造船、工作機械、乳製品、ベアリング、清涼飲料)
      リサイクル量(製薬)
      製品のリサイクルの可能率(自動車、ビール)
      古紙・再生紙の使用割合(製紙・百貨店)

    5. 行動計画の更新・追加等
    6. 目標の新規・追加 8業種
      (住宅、工作機械、乳製品、ベアリング、清涼飲料、電力、鉄鋼、自動車)
      対策の新規・見直し 9業種
      (工作機械、乳製品、ベアリング、清涼飲料、鉄鋼、電機、製薬、ビール、産業機械)

  7. その他
  8. 温暖化対策、廃棄物対策の他にも、環境マネジメント、海外事業活動における環境保全についても多くの業界で今後の方針や取り組み状況を示している。「経団連環境自主行動計画(1998年版)」を参照頂きたい。


#1
新たに4業種(日本工作機械工業会・日本乳製品協会・日本ベアリング工業会、全国清涼飲料工業会)参加し、合計41業種となった。

#2
1998年12月15日の公表後、業界からの計画の追加・修正に応じて、フォローアップも修正している。

#3
産業部門・エネルギー転換部門の企業のエネルギー及び原料の消費活動に伴い発生するCO2排出量を調査したものである。

#4
産業部門およびエネルギー転換部門の28業種は…電気事業連合会、日本ガス協会、石油連盟、日本鉄鋼連盟、日本化学工業協会、セメント協会、日本製紙連合会、日本自動車部品工業会、日本電子機械工業会、日本自動車工業会、日本建設業団体連合会、日本鉱業協会、住宅生産団体連合会、日本電機工業会、板硝子協会、日本ゴム工業会、日本電線工業会、日本アルミニウム連盟、日本製薬団体連合会、ビール酒造組合、日本伸銅協会、石炭エネルギーセンター、精糖工業会、日本産業機械工業会、石灰石鉱業協会、日本写真機工業会、日本造船工業会、日本鉄道車両工業会。

#5
環境庁発表のわが国のCO2排出量の内、エネルギー転換部門、産業部門、工業プロセスの合計である。

#6
なお、電力のCO2排出原単位低減の効果は、2010年度の産業部門の電力需要見通しを約6000億kWhとすれば(電気事業審議会による見通し)、産業界全体で1,200万t-C程度の削減量と見積もることができる。

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