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経団連企業行動憲章 実行の手引き
10.本憲章の趣旨に反するような事態が発生したときには、経営トップ自らが問題解決にあたり、原因究明、再発防止に努める。
また、社会への迅速かつ的確な情報公開を行うとともに、権限と責任を明確にした上、自らも含めて厳正な処分を行う。
- 背 景
- 経営トップの姿勢による不信感の増大
近年、企業不祥事が多発しており、中には薬害事件のように国民の生命や財産に重大な侵害を与える事例も起きるなど、大きな社会的問題となっている。これらの企業不祥事においては、事態の重大さにもかかわらず、企業と個人、経営トップと現場責任者などの間の責任や権限の所在が曖昧なため、原因究明が十分なされず、真実が国民の前に明らかにされなかったり、またことさら情報を秘匿し責任を回避しようとする企業側の姿勢が指摘されている。
また企業トップの口から明確に再発防止策が語られることも少なく、ますます社会の企業に対する不信感を増大させる結果となっている。
- トップに対する責任追求の動き
企業としての方針や責任ある施策を打ち出す上で、経営トップが果たす役割は大きく、また社会の期待も大きい。企業不祥事に関して、経営トップ層の責任を追求する株主代表訴訟が多数提起され、現実に巨額の賠償責任が認められたケースも出てきているのも、その一つの現れである。
- 基本的心構え・姿勢
- 企業の社会的責任を問われるような事態が発生した場合には、経営トップは、その原因を究明し、企業としての責任ある施策を打ち出す。
- 経営トップは常日頃から、責任と権限を明確にするなど社内体制を整備し、万一緊急事態が発生した場合には、自らの指揮の下、迅速かつ的確に原因究明を行い、対応方針を打ち出す。
- 社会に対しても経営トップ自ら、事態の経過、対応方針、再発防止策等について明確な説明を行う。また、事実関係を確認した上で、処分をすみやか、かつ厳正に行い、社会的にも十分理解される形で事態の収拾を図る。
- 経営トップ自らが直接関与していない場合でも、事案によっては管理者としての責任を十分認識した上で、自らに対し厳しい処分を課すことも必要である。
- 具体的アクション・プランの例
- 日常的準備
- 各部門およびその上下の責任と権限を明確化する。
特に各部門間の接点業務についての権限、責任を明確にしておく。
- 不祥事等の緊急事態発生時の管理、広報体制を構築する。
- 緊急事態発生時の指揮命令系統の確定(権限委譲の制度と規定)
- 緊急事態発生時の連絡体制の確保
- 緊急対策本部の設置手続きを整備する。
- 緊急対策本部の設置手続きの整備
- 対策本部の任務と機能に関する規定の整備
- 対策本部のメンバーに関する規定の整備
(メンバーは広報部、総務部、人事部、法務部等のスタッフおよび該当の業務部門を含むようにする)
- 緊急事態発生時の行動指針を具体的に定めたマニュアルを作成する。
〔マニュアルに記載すべき事項〕
- 会社の危機管理に関する方針、基本理念
- 緊急事態発生時の経営トップの役割
- 緊急事態発生時の管理体制、組織の業務と権限に関する規定
- 個々の事業、立地環境に即して作成する行動指針
〔ポイント〕
- 自社に起こりうる具体的事例に即して、解説する
- 個々の事態において、是非すべきこと、絶対すべきでないことを整理、分類した上で箇条書きで表記する
- 研修、実地訓練を実施する。
- 一般従業員、管理職など権限別に、緊急事態への対応方法についての研修を実施
- 緊急事態発生を想定し、対策本部の設置や関係部門への連絡、広報対応等についての実地訓練を実施
- 緊急事態発生時の経営トップのマスコミ対応に関するシミュレーション研修の実施
- 企業活動に伴うリスク情報を収集・分析する。
- 自社にとってのリスク情報の収集と分析、データベース化(例:危機管理プロジェクト・チームの設置)
- 消費者窓口の設置または強化
- 同業他社の事例の収集分析
- 企業の経営理念や社会的責任を対外的に示すため、マスコミやパンフレットを活用し、積極的なPR活動を展開する。
- 会社案内、パンフレットの作成
- 危機、脅威に対する企業の信念、姿勢を示す資料を作成
- 不祥事等緊急事態の発生時
- 迅速な連絡を行う
- 管理責任者への連絡、関係要員の招集
- 経営トップを長とする対策本部を設置
- 情報収集および指揮命令系統の一元化
- 出来るかぎり迅速な事態の状況把握
- 「何かを防ごうとしない」
- 事態を出来る限り迅速に収集するために必要な事項を検討する
- 現場においてはその時点で判明していることを本社に報告する
- 現場責任者と対策本部を繋ぐ情報連絡用ホットラインを確保し、迅速な情報連絡に努める。
- マスコミ等を通じ広く社会に対し、出来る限り早い段階で情報公開に努める。マスコミ等への発表は極力経営トップ自らが行う。
- メッセージは弁解ではなく率直な事実の説明に努める。初期の段階であれば、状況の変化に応じて事実の追加、訂正はありうるものと考える
- トップ自らが誠実な態度で率直に語り責任と誠意のある企業姿勢を示す
- 嘘の発言は絶対に行わない。ノーコメントにする場合は、その理由とコメント出来る時期を明確にする。
- 外部(マスコミ)に対してのみでなく、企業のステークホルダーズに対する報告も行う
- 社内のマスコミ対応窓口を一本化して混乱を避ける
- 対策本部は、原因究明・再発防止に努める。
- 事実の正確な把握による徹底的な原因究明
- 社内体制の見直しなどによる効果的な再発防止策の検討
- 報告事項、公表事項の確認・整理
- 責任の明確化
- 直接関与者に対する処分を行う。
- 事実関係が明確になり次第、すみやかに直接関与者に対する厳正な処分を行う
- 事案によっては、トップも含め監督者に対する厳正な処分を行う。
- 処分内容を公表する。
- 本憲章に反するような事態が発生した際の会員の自己責任に基づく経団連への申し出
- 本憲章に反するような事態が発生した場合、会員は、なるべく速やかに経団連にその内容等について報告を行う。その際、経団連の会員資格、役員、委員長等についても適宜、自己の判断で申し出ることが望ましい。
- 経団連では必要に応じ、定款12条委員会を設け、委員会は上記を参考にして、あるいは同委員会の判断で、会員から事情を聴取し、経団連としての対応策を会長に具申する。
- ―経団連における規定―
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経団連定款12条では、会員企業による定款その他の規則違反、または経団連の名誉を毀損する行為があった場合にとりうる対応を以下のように定めている。
- 【経団連定款12条】
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会員は、その資格を喪失したとき、または除名されたとき退会する。会員が退会を希望するときには、別に定める手続きにより届け出をなし、退会することができる。
会員は、本定款その他の規則を遵守せず、または本会の名誉を毀損する行為があったとき、理事会の決議により除名されることがある。
会員が退会した場合は、本会に対する権利を失い、同時に義務を免れる。ただし、未納の会費は徴収され、既納の会費は返還されない。
- 【関連資料】
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『危機管理と広報』(企業広報講座V)1993年 経済広報センター監修 日本経済新聞社
『危機管理入門ハンドブック』1996年 日本在外企業協会編集
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