2008年4月15日 (社)日本経済団体連合会 環境安全委員会 地球環境部会 |
日本経団連として、3月19日とりまとめの「洞爺湖サミットに向けた地球温暖化問題に関する基本的な方針」の具体化を図り、洞爺湖サミットを実りあるものにするため、下記の主張について、G8ビジネス・サミットの場をはじめとする国際会議等の場において、内外の関係者に働きかけていく。
すべての主要排出国が参加して、長期ビジョンを共有するとともに、実効ある温暖化対策に取り組む枠組を構築することがポスト京都議定書における最重要課題である。
わが国は、サミット議長国として、米国、カナダ、欧州諸国をはじめとするG8サミット・メンバー国のみならず、インド、中国といったサミットの非メンバー国とも十分な意見交換を行ない、すべての主要排出国の参加を促すために、あらゆる努力を払う必要がある。
削減ポテンシャルの大きい途上国の参加を促し、実効ある温暖化対策を進めるため、現在APP(アジア太平洋パートナーシップ)において行われているような協力的セクトラル・アプローチを推進し、地球規模での省エネならびにエネルギー効率の向上に取組んでいくべきである。そこで、洞爺湖サミットでは、セクター毎のエネルギー効率に係るベンチマーク等の基準の設定等に向けた必要な情報・データ収集の方法や国際機関の活用も含むエネルギー効率の客観的評価の仕組み、ベスト・プラクティスの導入に必要な支援策について合意を形成することが求められる。
協力的セクトラル・アプローチの推進はわが国の温暖化防止への貢献につながるが、具体的な省エネ技術やベスト・プラクティスのノウハウを有するのは民間企業であることから、わが国産業界としても、各国の産業界と連携しこれを推進していく。その一環として、適切な形で必要なデータ等の提供も行っていく。
円滑な技術移転を通じた途上国への貢献を推進するためには、知的財産権の適切な保護が必要であり、この点についても意見の一致を見ることが望ましい。
ダボス会議において、福田総理が、世界の省エネ努力を支援するための多国間の新たな基金の創設を呼びかけており、洞爺湖サミットで具体的な合意が得られることが期待される。
加えて、途上国の省エネ・エネルギー効率の向上のためには、民間セクターによる直接投資が効果的であり、関連法制度、人材等を含むハード・ソフト両面におけるインフラ整備等、投資環境の整備が望まれる。
洞爺湖サミットでは、公平で客観的な国別総量目標の設定方法についての合意を目指すべきである。こうした観点から、エネルギー効率等を基礎に部門毎に一定の基準を設定して削減ポテンシャルを算出し、それらを積み上げる手法(部門別積み上げ方式)を採用することが望ましい。部門別積み上げ方式を採用した場合、削減負担の公平性の確保に資するのみならず、目標設定時に具体的な削減方法が把握できるため、各国の目標達成の蓋然性を高めることにもつながる。
具体的には、CO2排出源を、電力、産業、輸送、民生の各部門に分け、各部門の中で排出量の多い分野について、エネルギー効率目標を考慮して排出量目標を算出し(例えば、火力発電の場合は燃料種別発電効率×発電量、製造業の場合は主要製品の生産1単位あたりエネルギー消費原単位×生産量、自動車輸送の場合は排出原単位×総輸送量、家庭の場合は人口一人当たりエネルギー消費量×人口)、これを基に国別に削減ポテンシャルを判断し、総量目標を決定する。
なお、特定の部門の特定の分野において、当該分野独自の削減目標が国際的に合意できるのであれば、当該分野は、国別総量削減目標とは別に位置づけ、その実現を図る仕組みを設けることも検討すべきである。
政府は本年3月、「Cool Earth-エネルギー革新技術計画」をとりまとめたところであり、洞爺湖サミットでは、同計画で示された技術ロードマップを国際的に共有し、技術開発の加速に向けて連携を強化すべきである。
2050年に世界全体の温室効果ガスを現状比で半減するためには、先進国でゼロ・エミッションを実現したとしても、途上国において対BAU(成り行き)比60%の排出削減を実現することが必要との試算もある。環境と経済との両立を図りつつ、このようなレベルの排出削減を実現するためには、革新的な技術の開発が不可欠であることについて認識を共有することが望ましい。
なお、国際連携の下で技術開発を進めるにあたっても、知的財産の保護について十分に合理的な配慮がなされる必要があることは言を俟たない。
民生部門における温室効果ガスの抑制に向け、洞爺湖サミットにおいて、省エネ製品等の地球温暖化防止に資する財・サービスの貿易を阻害する関税や基準・認証等の障壁撤廃の推進について合意がなされることが期待される。
(1) ポスト京都議定書の国際枠組交渉にあたっては、他国の削減ポテンシャルを十分に把握し、交渉を行っていくことが重要である。
(2) 在外公館の情報収集能力・情報分析能力を駆使するとともに、主要排出国の削減ポテンシャルについて、分析・把握する部署を政府部内に設置することが求められる。産業界としても、データの提供やその分析等、適切な形で協力する。
(3) 実際に温暖化対策に取組むのは民間部門であり、G8サミットやUNFCCC等などに国際交渉において、民間部門の意見が十分取り入れられる必要がある。
(1) 国別目標の達成の手段・仕組みについては、対策に要する費用も踏まえ、そのあり方を予断することなく、幅広く検討を行うべきである。
(2) 検討を行うにあたっての主な視点は以下の通りである。
(1) 地球温暖化防止に向けて、産業界が果たす役割は大きい。そこで経団連では、協力的セクトラル・アプローチをさらに推進するとともに、G8ビジネス・サミットを機に、各国経済団体に対して、地球温暖化防止のための行動指針の策定を呼びかける。
(2) また、わが国産業界は、(1)製造過程ならびに製品における世界最高水準のエネルギー効率の追求、(2)技術移転を通じた地球規模での排出削減、(3)「2050年半減」に向けた革新的な技術開発の推進等に努めていく。
(3) 特に、97年以来経団連が推進しているCO2削減のための環境自主行動計画については、各企業が社会的コミットメントとして実績を挙げており、生産活動の増加が生じている場合等には、CDMクレジットを購入してまで目標達成を図るなど固い決意で取組んでいる。今後ともその実効性向上を図るとともに、透明性・信頼性の確保に一層積極的に取組んでいく。