地球温暖化防止は、人類生存の基盤に関わる最重要課題であり、7月に開催されるG8洞爺湖サミット、また、経団連が4月に開催するG8ビジネス・サミットにおいても主要課題とされている。
ポスト京都議定書のあり方については、中長期の展望の下に、わが国が地球益と国益を踏まえて国際枠組の構築にリーダーシップを発揮することが強く期待される。
われわれは、本格的な議論が始まったこの機会を捉え、改めて下記の考えを示したい。
ポスト京都議定書の国際枠組については、昨年6月に、(1)すべての主要排出国の参加、(2)各国の事情に配慮した柔軟性と多様性の確保、(3)環境と経済の両立、という三原則が日本政府によって掲げられた。また、本年1月には、いわゆるダボス会議において、福田総理から、(1)主要排出国全員の参加、(2)セクター別のエネルギー効率と今後活用される技術を基礎とした公平な国別目標設定、(3)公平の見地からの基準年の見直し、(4)技術移転によるエネルギー効率の改善および資金メカニズム整備による国際環境協力、(5)革新的技術開発(イノベーション)の推進等の提案がなされている。
経団連は、これら日本政府の方針を全面的に支持し、この方針の具体化に向けた政府の取り組みに積極的に協力する。
とりわけ、温暖化は地球規模の問題であることから、米国、中国、インドをはじめとするすべての主要排出国の参加が不可欠である。わが国は、サミット議長国として、米国等の関係国に対し、その理解を得ることを最優先すべきである。
国別総量目標の算定にあたっては、実際のエネルギー効率をベースとしてセクター別に積み上げていく方式を採用することが、国別総量目標の公平性を確保するとともに、国際枠組への多くの国の参加を得るうえで重要である。省エネ・エネルギー効率の向上は、CO2の排出削減につながるのみならず、すべての国が関心を有する、資源寿命の延長、エネルギー安全保障の確保、さらには喫緊の課題となっているエネルギー・コストの低減につながる。技術開発の推進・技術の普及は、CO2の削減・吸収両面において、地球温暖化防止の鍵である。
セクター別の積み上げ方式に関する具体的考え方については、経団連としても、今後、改めて考えを述べることとしたい。
洞爺湖サミットの主要議題は、以上のように、本来、米国をはじめとする主要排出国の参加およびそれを可能とする国別総量削減目標の設定方法を含む国際枠組のあり方と技術開発の推進・普及方策であると考えられ、まず、それらについて合意形成することが何より重要である。国際枠組に絡んで、目標達成のための手段・仕組みである排出量取引制度等が先行して議論されるべきではない。
国別総量削減目標の達成の手段・仕組みについては、(1)自主行動計画、(2)各種排出量取引制度、(3)税・財政上のインセンティブといった排出削減のための方策、また、森林吸収策もある。G8サミット議長国のわが国としては、柔軟性・多様性の確保という政府の方針に沿って、特定の方策に限定せず、広く諸方策について検討すべきである。
今後、ポスト京都議定書の枠組の論議は、新たに設置された「地球温暖化問題に関する懇談会」が中心となるが、そこで大局的な観点から実効ある地球温暖化対策について議論が進められることを期待する。また、4月のG8ビジネス・サミットにおいては、省エネルギー・エネルギー効率の向上、革新的技術開発を中心とするわれわれの考え方を、参加各国経済界の共通メッセージとして世界に発信することとしたい。