2007年6月27日 (社)日本経済団体連合会 情報通信委員会 情報化部会 IT新改革戦略推進ワーキンググループ |
内閣IT戦略本部では、「いつでも、どこでも、誰でもITの恩恵を実感できる社会」を2010年までに実現するという目標に向け、2006年にIT新改革戦略を策定した。さらに、IT戦略を一層推進するため、今後のIT政策に関する基本的な方向性を取りまとめ、本年4月に「IT新改革戦略政策パッケージ」を発表した。
「重点計画-2007」は、IT新改革戦略およびIT新改革戦略政策パッケージに掲げられた目標を達成するため、2007年度に実施すべき具体的施策である。本計画について下記のとおり意見を述べる。
冒頭の基本方針で、PDCAサイクルを確立し、評価・実施体制の充実強化を図ることを方針としている。しかし、PDCAサイクルの要であるCheck機能を担う評価専門調査会が、現行の体制では、主に民間の立場から評価を行なうという目的を達成することは難しい。早急に、調査会に実効性のある評価を可能とする権限や人材面等で独自性を持たせ、政府との間に緊張感を持った評価者−被評価者の関係を構築しなければならない。また、Act機能が効果的に機能するよう、評価結果に基づきIT戦略本部が適切な改善を確実に行わせる仕組みも、評価体制の拡充強化として不可欠である。
2007年度中にアクションを起こすべき施策については、早急に詳細なロードマップを作成し、進捗管理を徹底するべきである。特に民間と連携する必要があるものに関しては、議論する時間を十分に確保していただきたい。
重点計画と銘打っていながら、施策が多岐に亘っており、何処に重点があるのか分かりづらい。重点を置くべき項目を明確にしたうえで集中的に取組みを推進するべきである。また、各項目について、何を何処までやるか・その結果どういう効果があるかといった分かりやすい成果目標を設定するべき。そのための手段の一つとして、取組みの進捗を客観的に評価するため、IT新改革戦略の数値目標を踏まえ、年度毎の指標及び数値目標をできる限り設定するべきである。
わが国の電子行政サービスは、未だ実用段階にあるとは言い難く、「利用者視点に基づく利便性の向上」と「行政運営の効率化」に向けた一層の努力が必要であり、そのためには強力なリーダーシップによるトップダウン方式の推進が不可欠である。具体的には、日本経団連が「世界最先端の電子行政の実現に向けた提言」で提案したように、政府内に、公的部門全体にまたがる電子行政のグランドデザインを立案する権限を付与した、官民の有識者からなる「電子政府推進会議(仮称)」の設置が必要と考える。そして、その事務局機能を果たすための常設組織として、府省庁及び自治体等、そして民間から集めた、実務に精通しかつITに関する専門知識を有したメンバーにより構成する「電子政府推進センター(仮称)」を設置する。そして、その指揮の下、全体最適を考慮して電子行政を推進するべきである。2010年に世界最先端の電子行政を実現するためには、2007年度中に電子政府推進会議を設置し、2008年度上期にはグランドデザイン立案及び2010年までのロードマップを作成のうえ、2009年上期までには実証実験を完了しなければならない。
電子行政の利用を促進するためには、何よりもまず利便性向上のため、省庁間の枠を超えた、簡素で効率的な行政手続きを再構築することが重要である。そして日本経団連が「世界最先端の電子行政の実現に向けた提言」で示したように、利用者がポータルサイトからログインして、各自のアカウントからオンラインで手続きを完結させるワンストップ・サービスを提供する仕組みづくりを目指すべきである。
電子商取引・電子タグ基盤の整備は、企業経営の最適化やユビキタス社会の実現に不可欠なものである。産業横断的なコンセンサスの形成およびルール作りを着実に実施するためにも、詳細なロードマップを作成し、政府がイニシアチブを執って推進するべきである。
「個人が自ら健康情報を管理し健康管理等に活用するための仕組み」を2011年当初までに確立するとあるが、スケジュールに関して「2008年度までに方針を示す」としか書かれていない。ロードマップを作成し、より明確にスケジュールを示すべきである。また、国民・利用者に対する啓発活動や、情報化に対応しきれない利用者のために多様なアクセスチャネルを整備するなどの施策も盛り込むべきである。
医療機関等の情報基盤整備に当たっては、利用者の利便性向上のため、より広範な医療文書の電子化、事務手続きのワンストップ・サービス化を念頭に置いて推進しなければならない。そのためには行政におけるBPRの実行が不可欠であり、BPRのロードマップも示されるべきである。
将来的には、利用者の利便性向上の観点から、公的年金制度等も含め医療・健康・介護・福祉分野にまたがりワンストップ・サービスを提供する「社会保障ポータルサイト」の実現を目指しグランドデザインを見直す必要がある。また、情報化推進状況の評価に当たっては、利便性がどれだけ向上したかという視点が重要であり、例えば審査期間や事務処理工程がどれくらい短縮したか、といった指標をもって評価するべきである。
電子行政の利用を促進するためには、何よりもまず利便性向上のため、省庁間の枠を超えた、簡素で効率的な行政手続きを再構築することが重要である。そして日本経団連が「世界最先端の電子行政の実現に向けた提言」で示したように、利用者がポータルサイトからログインして、各自のアカウントからオンラインで手続きを完結させるワンストップ・サービスを提供する仕組みづくりを目指すべきである。
地方税のオンライン申告利用率向上のためには、地方公共団体のオンライン利用促進を図るだけでは不十分である。利用者の利便性の観点から、国税も同時に、それも一括してデータ送信ができるワンストップ・サービスを実現することと、オンライン上で手続きが完結する仕組みづくりを最重要課題と位置づけて取組むべき。これらが実現すれば、自ずと利用率は向上する。そのためにはまず、納税に係る業務の抜本的見直し・効率化に真摯に取組むとともに、e文書法を活用して民間に文書の電子化を促さなければならない。文書の電子化促進にあたっては、数値目標を設定し、政府から積極的に民間に文書電子化を呼び掛けるべきである。
各省庁がそれぞれのシステム毎に個別にICカードを発行することは、経済面な観点から非効率的であるし、利用者にとっては利便性を損ない、カードの管理も煩雑になる。原則として住民基本台帳カードを共通ICカードと位置づけ、極力統一する方向で検討するべきである。
電子行政の利便性向上の前提として、ユーザーの単一コードによる一元管理は必須。社会保障番号等の共通IDを個人ユーザーに割振るとともに、個人情報保護に十分なセキュリティ水準を提供できる枠組みを早急に確立するべく、省庁横断的な取組みを強力に推進するべきである。
「行政運営の簡素化、効率化、高度化及び透明性の向上」は、「世界一便利で効率的な電子行政の実現」において「国民の利便性の向上」と並び両輪を成す重要な課題であるにもかかわらず、「業務・システム最適化」としてシステム最適化と一緒くたに取り扱われ、具体的施策の実効性も十分とは言えない。業務の効率化とバックオフィスにおけるシステム最適化は切り離して施策を策定するべき。また、システムありきの業務効率化ではなく、まず省庁横断的かつ抜本的な業務の見直しを実施したうえで、それに合わせてシステムのグランドデザインを再構築するのが適正な順序である。さらに、業務効率化の進捗を客観的に評価するために、重点計画においても「手続きの統廃合件数」「行政事務コスト削減率・人員削減率」といった指標を年度計画として定め、数値目標を設定するべきである。
バックオフィスにおけるシステム最適化においては、巨額の予算を投入しているにもかかわらず、国が管理するべき情報の管理すらできていない。現在、社会問題化している社会保険庁の年金問題が最たる例である。その原因として、システム最適化計画のスパンが長いために、計画の成果開示やその評価が適正になされておらず、PDCAが上手く回っていないことが挙げられる。計画を立てるだけでなく、フォローやチェック、それを踏まえたBPRも併せて実行することが重要であり、「バックオフィスにおけるシステム最適化」には、数値目標の設定、定量的な評価、成果の開示等を含め、より重点的に取組まなければならない。
高度IT人材育成においては、総務省のナショナルセンター的機能を有するICT専門職大学院設立構想を高く評価する。これまでの産学官連携の取組みの成果を蓄積・展開するためのプラットフォームの在り方としては、このようなセンターを柱とする全国展開が最も効率的であると思われ、内閣官房IT担当室においては政府内の調整・対応取りまとめを担い、より効果的な枠組みを構築すべきである。