優先政策事項 添付資料
経済活力を維持・強化し、雇用の維持・創出、国民生活の安定を図るため、中長期的に潜在的国民負担率を50%程度に抑制する。このため、社会保障制度の改革をはじめ歳出・歳入の改革を一体的に進める。
2010年代初頭に基礎的財政収支を黒字化することを目標に、社会保障支出の抑制、国・地方を通じた公務員人件費の削減、特別会計改革など、徹底的な歳出削減を実行する。これに関連して、国庫補助負担金・地方交付税交付金の縮減等の地方財政改革を行う。あわせて、2007年度を目途に、消費税率の引上げを含む税体系の抜本的改革を実現する。税制改正においては、研究開発・設備投資の促進など企業活力の向上、会社法制定への対応、不動産の流動化促進等に必要な税制措置を実現する。また、法人実効税率の引下げを通じ、国際競争力を強化する。
少子化・高齢化の急激な進展に対応した持続可能な社会保障制度の確立に向けて、年金、医療保険、介護保険制度などの一体的改革のグランドデザインを早急に明らかにし、速やかに実行に移す。また、重点的・効果的な少子化対策を実施する。
社会保障制度の再設計にあたっては、国民の自立・自助を基本とし、給付は真に必要な部分に重点化する。医療保険制度の効率化・重点化により2010年度の公的医療給付費を30兆円以内に抑制する。このため高齢者と現役世代との給付の均衡、食費・居住費などの重複した給付の整理など、世代間・制度間の公平を図る。さらに、ICTなどを利用した医療の透明化・標準化、診療報酬の簡素化・包括化を進め、国民が分かりやすい医療制度とする。公的年金についてはまず被用者年金の一元化を実現する。厚生年金保険料率は15%相当で固定する。社会保障財源については、消費税を含めそのあり方を決定する。また、社会保障制度に共通する個人番号制と個人会計制度(仮称)を導入する。
少子化対策については、従来までの諸施策の効果を検証した上で、財源を効率的に再配分し実施する。また、国、地方自治体、産業界・企業、地域コミュニティ、国民、各主体が連携して、複合的に取り組む国民的運動を展開する。
縦割り行政の弊害を排除し、スピード感ある構造改革を推進するため、一層の行政改革を図る。あわせて、官主導社会から脱却し、個人や企業の多様な挑戦を促進するため、規制改革・民間開放を推進する。さらに、わが国企業の国際競争力を強化するため、企業経営の効率化や資金調達の円滑化を図る。また、経済法制の整備に当たっては、企業の過度な負担の回避と自主的な内部統制の確立を重視する。
公共サービス効率化法(市場化テスト法)案(仮称)を2006年の通常国会に提出し、早期成立を図る。医療など重点分野における規制改革を一層推進するとともに、構造改革特区、規制改革・民間開放集中受付月間における要望の実現数を高める。また、内閣による一元的な人事・再就職管理の導入、身分保障の在り方の見直しなど、国家公務員制度の抜本改革を行う。さらに、ICTを活用した公務の業務改革を推進し、今後5年間で4割以上の効率性向上を実現する。2007年10月からの郵政民営化に向けた準備を着実に進めるとともに、政策金融機関を改革し、2008年度から新体制に移行する。独立行政法人について、事業の廃止・縮減、民営化等を積極的に進める。また、特定独立行政法人の非公務員化を推進する。
新会社法について、企業実態に合った施行規則の制定などにより2006年春の円滑な施行を図る。また、独占禁止法については、措置体系を見直すとともに、より一層適正な手続(デュー・プロセス)を確保し、21世紀にふさわしい競争政策の土台を構築するための抜本改革を図る。
科学技術創造立国を実現し、イノベーションを創出するとともに国民生活を質的に向上させる。このため、バイオ、ICT、環境、ナノテクノロジー・材料、ものづくり、宇宙・防衛などの先端技術開発とその産業化を促進する。あわせてコンテンツ産業の振興に向けた官民の取り組みを強化する。
強靭な経済・産業の実現等、総合科学技術会議が定めた政策目標を実現すべく、府省の壁を越えて研究開発を推進する体制を整備する。また、産学官連携を促進するための施策を戦略的に実施するとともに、人材育成、国際標準化、規制改革などの施策を包括的に実施する。知的財産政策を強化し、産業レベルでの技術革新を活性化させる。政府研究開発投資の総額目標として対GDP比1%を掲げる第三期科学技術基本計画を2005年度中に策定する。世界最先端のICT利活用国家の実現に向け、利用者の視点から成果目標が明確に記された次期ICT国家戦略を策定する。わが国発の良質なコンテンツの内外への発信と多面的な活用を推進する。
国民生活や経済活動の安定・繁栄の基盤として、エネルギー・環境政策を一体的に推進し、経済と環境の両立を実現する。
2006年に予定されているエネルギー基本計画の見直しにおいて、総合的なエネルギー政策を確立する。特に、原子燃料サイクルの推進を含め、原子力を基幹としたエネルギー源の多様化とベストミックスを進める。地球温暖化防止に関しては、経団連自主行動計画や国民運動など民間の活力を活かした対策を基礎とし、環境税や温室効果ガスの排出割当てなどの経済統制的な施策は、一切採用しないこととする。また、わが国の環境技術で地球規模の温暖化防止への貢献を拡大するとともに、米国や中国を含めたすべての国が参加する新たな国際的枠組みを早期に構築する。さらに、事業者に過大な負担を負わせることなく、政府・自治体・消費者・事業者の各々が適切な役割を果たす循環型社会を実現する。
創造性や国際性に富み心豊かで個性ある人材の育成に向けて、教育の質の向上と教育現場の活性化を実現する。このため、21世紀にふさわしい教育理念を確立するとともに、「多様性」「競争」「評価」を基本とする改革を断行する。
教育基本法を早期に改正し教育改革の枠組みを設定する。教育委員会や学校への権限委譲、株式会社立学校等の参入促進、学習指導要領の柔軟な運用などを通じ、多様な教育を実現するとともに、学校評価や学校選択制の導入促進等により、生徒や保護者の選択の幅を拡大する。同時に、学校への予算配分は、学校選択の結果が十分反映されたものとなるよう抜本的な見直しを図るとともに、予算執行に当たっての学校側の裁量を拡大する。教員の質の向上に向けて教員養成・採用制度の改善ならびにユーザーによる教員評価制度の導入を図る。
円滑な労働移動と雇用機会の創出に向けて、労働市場・労働基準に関わる規制を改革する。人口減少社会に対応すべく、女性や高齢者を含め、個人の多様な価値観を反映した雇用・就労形態を整備する。
ホワイトカラーエグゼンプション制度の導入等により、従来の労働時間規制の枠を超えて勤務形態の柔軟性を高め、労働生産性の向上と仕事と生活の調和の実現を図る。また、職業紹介・相談や能力開発の民間委託を進めて対象範囲の大幅な拡大を図り、労働市場を活性化させる。あわせて、多様な人材の活用を進める際に、必要となる柔軟な保育サービス提供に向け、幼保一元化の推進、直接契約方式を前提とした利用者への直接補助方式(バウチャー制度)への移行など、保育分野における規制改革を進める。若年者雇用の促進に向けては、職場体験やインターンシップなどを推進するとともに、各省庁が重複を廃し連携して政策を実施する。雇用保険三事業および労災保険労働福祉事業については、廃止・縮小に向けて、整理・合理化する。さらに、トライアル雇用の促進による企業の実態に即した障害者雇用政策に取り組む。外国人を積極的に受け入れる体制整備を総合的に進め、その一環として専門的・技術的分野の外国人労働者の範囲を見直す。
地方の自立や発展を促すため、中央集権・官主導体制を転換するとともに、地方行革を推進する。社会基盤の整備にあたっては、地域住民のみならず、利用者の視点を十分に反映させる。また、美しい街づくり、良質な住宅の提供、治安の向上を通じ、快適な住環境を整備する。
基礎的自治体を強化する観点から、引き続き市町村合併を推進し地方行政を効率化する。州制の導入についても鋭意取り組む。地域経済の活性化に向けて、中小企業の自立と活力の向上を図る。
首都圏空港等の容量拡大と国内・国際線の接続機能強化、首都圏三環状道路の整備等、大都市圏の交通・物流基盤を戦略的・効率的に整備する。これらに加え、国際観光立国の実現に向けてビザ発給手続の簡素化・透明化、地域の魅力開発に向けた人材育成等を実施し、外国人観光客を拡大させる。輸出入・港湾諸手続については、ワン・ストップ・サービス化などの業務改革やICTの活用を推進する。ITSによる世界一安全で円滑な道路交通国家の実現に向けて、2006年中にモデル実証地区を選定し既存の法制度を大胆に見直すとともに、省庁縦割りを廃した予算投入等を実施する。社会資本の整備にあたっては、使い勝手の向上を重視し、民間の経営ノウハウや資金を活用して、サービスの向上や運営の効率化を図る。このような観点から、早急に改正PFI法の運用ガイドラインを整備する。
住宅政策を国家戦略として位置付け、防災・防犯などの観点も踏まえた「住宅・街づくり基本法(仮称)」を2006年通常国会で制定する。住宅取得や新耐震基準、環境基準を満たす住宅の建設・改修については、自己資金・借入れを問わず、工事費の一定割合を控除する制度を導入する。
治安・防犯対策については、行政のタテ割りを排除するとともに、地域社会のネットワークを生かして犯罪抑止力を高める。テロや自然災害などの緊急事態に備え、省庁の枠を超えた危機管理体制を強化するとともに、政府と企業や住民が効果的に連携する体制を整備する。
個人、企業が自らの責任と創意工夫の下、国境を越えてより自由かつ円滑に活動できる環境を戦略的に整備する。このため、WTOに基づく多角的自由貿易体制の維持・強化を通商戦略の基軸に据えつつ、それを補完する手段として、わが国にとって重要な国・地域との間で経済連携協定(EPA)を締結する。また、重要な国・地域の安定・発展ならびにわが国との経済関係強化を促す手段として政府開発援助(ODA)を活用する。時代に則したわが国農業のあるべき姿を確立し、農業分野の構造改革を進める。さらに、対日直接投資の一層の促進を図る。
喫緊の課題として、WTO新ラウンド交渉を2006年中に終結させるため、わが国としても積極的な役割を果たし、グローバルな貿易・投資・サービスの自由化を促進する。同時に、農業を含む国内産業の競争力強化に資する構造改革を推進する。EPAについては、東アジア自由経済圏構築に向けて、韓国、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア等との交渉を早急に妥結・発効させるともに、日・アセアン包括的経済連携についても、2006年度内の妥結を目指し交渉を加速する。これらの通商政策を推進するためにODAを戦略的に活用する。また、資源・エネルギー関連および開発途上国のインフラ整備等に関わるリスクの高い海外プロジェクトについては、政策的支援を実施する。対外経済政策と必要な国内構造改革をわが国一体となって推進するための「戦略本部」「特命担当大臣」を設置する。
国際社会から信頼・尊敬される国家を目指し、わが国の繁栄と世界の平和に向け国際社会が抱える課題に主体的に取り組み、戦略的な外交・安全保障政策を推進する。
外交面では日米同盟と東アジア地域における連携強化を軸としながら、防衛、経済、技術などを含む総合的な安全保障の実現に向けて、政治がリーダーシップを発揮し、省庁横断的な体制を整備する。また、憲法改正を視野に入れつつ、自衛隊が国際社会と協調して世界平和に向けた活動を一層強化することができるよう、国際協力に関する一般法の整備など必要な立法を進める。