2005年3月2日 (社)日本経済団体連合会 宇宙開発利用推進会議 |
政府において、2006年度から始まる第3期科学技術基本計画の検討が進められている。経団連では、昨年11月に「科学技術をベースにした産業競争力の強化に向けて」を取りまとめ、現行の重点四分野の再整理とともに「産業や国家の持続的発展の基礎となる重要技術」を国として戦略的に推進すべきであると提言した。
現第2期計画において、宇宙開発利用は、重点四分野に位置づけられた環境分野やIT分野などと密接な関係にありながら、重点四分野ではないフロンティア分野として位置づけられたため、重点分野に比して、国の取り組みが十分だったとは言い難い。現第2期計画期間中の宇宙関連予算の削減により、宇宙産業は危機的状況にまで疲弊しており、欧米はもとより中国に対しても、競争力の低下が憂慮される事態となっている。
宇宙開発利用は人類の未来を切り拓く最先端科学技術であり、科学技術を国の繁栄の糧とする我が国にとって欠くことのできない重要分野である。また、宇宙は通信、放送、気象等の分野において国民生活に密着したインフラとなっている。さらに、防衛、災害、環境、経済など総合的な安全保障や国際貢献の観点からも、一層有効に活用すべき時期が到来している。
そこで、第3期科学技術基本計画の取りまとめに向けて、宇宙開発利用に関し、以下の通り要望するものである。
2004年9月に総合科学技術会議がとりまとめた「我が国における宇宙開発利用の基本戦略」では、今後10年程度の基本戦略として、宇宙開発利用を重要な国家戦略として位置づけ、人工衛星と宇宙輸送システムを必要な時に独自に宇宙空間に打ち上げる能力を将来にわたって維持することを我が国の宇宙開発利用の基本方針とした。我が国にとって、宇宙技術は科学技術創造立国実現の観点のみならず、総合的な安全保障を確立するためにも必須の技術であり、第3期基本計画において、宇宙開発利用を国家の重要基幹技術と位置づけ、国の取り組みを抜本的に強化すべきである。
北朝鮮によるミサイル発射や不審船侵入、テロ、台風や津波などの大規模災害、地球温暖化などの環境問題等、国民の安心・安全に対する脅威が多様化するなか、宇宙は、国の安全保障、危機管理面において欠くことのできない情報収集、伝達、分析手段となっている。これまでの宇宙開発の成果を積極的に社会へ還元するよう、国は、諸外国との連携も考慮しつつ、中長期的な観点から、総合的な安全保障に資する宇宙インフラの構築を進めるべきである。
また、これに関連し、宇宙の平和利用にかかる過去の国会での議論が、安全保障面での宇宙利用の制約とならないよう、必要な検討を進めるべきである。
宇宙開発利用の推進のためには、官民一体となって、我が国宇宙産業の体質を強化していくことが不可欠である。研究開発を中心としたこれまでの宇宙開発の歴史の中で、我が国の宇宙産業基盤は、欧米諸国に比して未だ脆弱であるばかりでなく弱体化しつつあり、今後の宇宙開発利用政策には、国際競争力強化に向けた産業政策の観点が欠かせない。官民の連携強化、役割分担の明確化、アンカーテナンシーとしての政府の宇宙利活用、中核技術への継続的な資源配分、輸出支援など宇宙産業の生産・技術面での基盤強化と産業活性化に向けた政策を含めた道筋を示すべきである。
国民の安心・安全の確保に向けて、防衛・安全保障に係る情報収集、災害監視、環境観測、気象観測ならびにその伝達や分析のための通信、放送、測位を含めた衛星ネットワークを整備し、総合的な安全保障や国際貢献に寄与することが重要である。とりわけ、米国GPSの補完により高精度測位を可能とする準天頂衛星システムは、安全保障のみならず行政の効率化や産業活性化の観点からも不可欠の国家インフラである。超高速インターネット衛星(WINDS)とともに、官民連携による取り組みを更に強化すべきである。
必要な時に独自に衛星を打ち上げる能力を維持し続けることは、国家の重要基幹技術として必須である。ロケット技術の維持・向上のためには、中小型ロケットを含めた輸送系のラインアップ構築や安定的な打ち上げ機会の確保が欠かせない。少なくとも年間4回以上の打ち上げ機会の確保を前提としつつ、H‐IIAロケットの更なる信頼性向上と民間移管、中型ロケットGXの着実な開発を推進すべきである。