日本経団連の「新ビジョン・シミュレーションの再試算結果」 <PDF>(2004年9月13日発表)で示した経済・財政改革をプラットフォームとして、2025年を目途とした、社会保障制度の一体的改革の方向性を示した。これをベースに、今後、個別制度改革の詳細な提案を行う。
経済財政諮問会議や「社会保障の在り方に関する懇談会」など、さまざまな場を通じて、意見反映や実現を図る。
最終的な目標は「自助努力を基礎とした社会の実現」。そのために、潜在的国民負担率が将来にわたり50%となることを目指した改革を進める。
社会保障・福祉制度に共通する基盤整備として、個人番号制を拡充・徹底し、社会保障個人別の会計を導入する。それにより、適用・負担に関する不公正の解消と、趣旨が重複した給付の排除による効率化を図る。
年金・医療・介護に共通する改革は、低所得者層への配慮をしつつ、高齢期における最も基本的な生活費部分を年金に集中するとともに、入院時や介護保険施設入所時の食費・居住費相当部分は自己負担とする(医療保険・介護保険の給付対象から外す)。
社会保障全体の給付については、改正年金法に基づいた給付費をさらに5%抑制することを含め、現行の医療・介護保険制度等を改革しなかった場合の給付費に対して、20%程度の抑制が必要である(国・地方の歳出抑制が前提)。
公的年金制度は、「税方式の定額給付+所得比例給付」を目指し、保険料率は15%相当で固定する。スウェーデンのような全国民共通の所得比例年金方式については、所得捕捉や納付状況など克服すべき課題の解決に目途がついた段階で検討すべきである。
医療保険制度は、医療の質の向上のために、短期・中長期の対策に重層的に取り組む。医療分野でのIT活用により情報開示を進め、医療の標準化、診療報酬の包括払い、さらにいわゆる混合診療の容認などで医療費の適正化を図る。
高齢期の医療保険制度については、65歳以上を対象に、独立した責任主体を保険者とする。給付の財源は、少なくとも5割を公費で、残りを高齢者自身の保険料と65歳未満の若年者からの支援金とする。給付割合は、若年者の医療保険制度とバランスをとり、外来7割、入院8割とする。
介護保険制度は、要介護状態の防止・軽減等を図るように給付の重点化を進め、高齢期の医療保険とのバランスをとった負担とする。入院から介護保険施設への入所、さらに在宅での療養・介護サービス受給への流れを強め、全体として効率化を進める。