総人口が減少していくなかで、活力と魅力溢れる社会を実現するためには、既存の制度をあらゆる角度から見直し、持続可能なものに再構築することが求められる。
経済活力維持のために国民負担率を50%以内に抑制すべきであるが、財政赤字を含めた潜在的国民負担率は既に47.1%に達しており、これ以上国民負担を増やす余地はほとんどない。
国・地方を通じた徹底的な行財政改革による歳出入ギャップの縮小、年金をはじめとする社会保障給付の見直し、経済構造改革の推進により官の役割を最小限に止めつつ、個人や企業がその潜在的な力を十分に発揮できる基盤を整えることが必要である。
社会保険料や、個人・企業の所得に対する課税ではなく、国民が広く負担を分ち合う仕組みである消費税を、わが国税制の根幹に拡充することが不可避である。2004年における基礎年金の公費負担の増加、高齢者医療、介護の財源として、消費税率を、第一段階として3%程度は引き上げるべきであり、国と地方の税源見直しをも考慮すれば、地方消費税をあわせた消費税率を遅くとも2007年度までには10%とすべきである。
徹底した歳出の削減と社会保障制度の改革、機動的な消費税率の引上げを中心とする税制改革を併せて進めることにより、2025年度までの消費税率の増加を18%程度までに抑えることが是非とも必要である。
国・地方を通じた事業全体を厳選、縮減した上で、委任事務の経費は国の負担とする一方、自治事務の経費は地方自治体自らの負担として自主財源・起債によって賄える範囲におさめ、国による財政支援の対象外とすべきである。
地方自主財源は、住民が薄く広く分担する個人住民税や居住用資産に係る固定資産税を基本とし、所得税から住民税に税源の一部を移譲するとともに、住民税の比例税率化を進める。また、地方税においても広く負担を求める地方消費税を将来の基幹税目として位置付け、税源の安定化を図るべきである。
地方交付税は、将来的な廃止を前提に、国から地方へ財源を補填する制度から、地方自治体間においてその財政力格差を調整する制度へ転換していく必要がある。当面、算定方法についてできるだけ客観的かつ明確な基準のもとで交付額を算定する仕組みとするとともに、基準財政需要額についても見直し、全体としての交付額の削減を図るべきである。その財源についても、国税収入の一定比率を地方交付税交付金とする制度を改め、国税収入にかかわらず、一定の所要額を拠出する仕組みに改めるべきである。
当面、地球温暖化対策推進大綱に盛り込まれた施策を着実に実施することが必要であり、大綱が示す第1ステップの各部門における対策の成果を評価し、これに基づいて必要な追加策を検討することが順当である。こうした手続を踏まずに、税に限って議論を進める理由はまったくない。
「環境税」の議論にあたっては、既存税制との調整が欠かせない一方、歳出面ではエネルギー特別会計等との調整や一般会計との整理の問題があり、税制全体の抜本見直しのなかで議論すべき課題である。こうした総合的な検討が行なわれないまま、「環境税」導入の議論を進めるのは本末転倒である。